酒場中がしんとなっていた。マダム・ロスメルタはカウンターの向こうで目を凝こらしていた。注いでいる蜂はち蜜みつ酒しゅが大だるま瓶びんから溢あふれているのにも気づいていないらしい。
リータ・スキーターの笑顔がわずかに動どう揺ようしたが、たちまち取り繕つくろって笑顔に戻った。ワニ革がわバッグの留め金をパチンと開き、自じ動どう速そっ記き羽は根ねペンQQQを取り出し、リータ・スキーターはこう言った。
「ハリー、君の知っているハグリッドについてインタビューさせてくれない? 『筋きん肉にく隆りゅう々りゅうに隠された顔』ってのはどうざんす? 君の意外な友情とその裏の事情についてざんすけど。君はハグリッドが父親代わりだと思う?」
突然ハーマイオニーが立ち上がった。手にしたバタービールのジョッキを手しゅ榴りゅう弾だんのように握り締めている。
「あなたって、最低の女よ」ハーマイオニーは歯を食いしばって言った。「記事のためなら、何にも気にしないのね。誰がどうなろうと。たとえルード・バグマンだって――」
「お座りよ。バカな小娘のくせして。わかりもしないのに、わかったような口をきくんじゃない」ハーマイオニーを睨にらみつけ、リータ・スキーターは冷たく言った。「ルード・バグマンについちゃ、あたしゃね、あんたの髪かみの毛が縮ちぢみ上がるようなことをつかんでいるんだ……もっとも、もう縮み上がっているようざんすけど――」
ハーマイオニーのボサボサ頭をちらりと見て、リータ・スキーターが捨すて台詞ぜりふを吐はいた。
「行きましょう」ハーマイオニーが言った。「さあ、ハリー――ロン……」
三人は席を立った。大勢の目が、三人の出ていくのを見つめていた。出口に近づいたとき、ハリーはチラッと振り返った。リータ・スキーターの自じ動どう速そっ記き羽は根ねペンQQQが取り出され、テーブルに置かれた羊よう皮ひ紙しの上を、飛ぶように往いったり来たりしていた。