ダンブルドアは、ファングの耳をカリカリするのにちょっと立ち止まり、小屋を出ていった。その姿を見送り、戸が閉まると、ハグリッドはゴミバケツの蓋ふたほどもある両手に顔を埋うずめてすすり泣きはじめた。ハーマイオニーはハグリッドの腕を軽く叩たたいて慰なぐさめた。やっと顔を上げたハグリッドは、目を真っ赤にして言った。
「偉大なお方だ。ダンブルドアは……偉大なお方だ……」
「うん、そうだね」ロンが言った。「ハグリッド、このケーキ、一つ食べてもいいかい?」
「ああ、やってくれ」ハグリッドは手の甲で涙を拭ぬぐった。「ん。あのお方が正しい。そうだとも――おまえさんら、みんな正しい……俺おれはばかだった……俺の父ちゃんは、俺がこんなことをしてるのを見たら、恥ずかしいと思うに違ちげえねえ……」
またしても涙が溢あふれ出たが、ハグリッドはさっきよりきっぱりと涙を拭った。
「父ちゃんの写真を見せたことがなかったな? どれ……」
ハグリッドは立ち上がって洋服箪だん笥すのところへ行き、引き出しを開けて写真を取り出した。ハグリッドと同じくくしゃくしゃっとした真っ黒な目の、小こ柄がらな魔法使いが、ハグリッドの肩に乗っかってニコニコしていた。そばのりんごの木から判断して、ハグリッドは優ゆうに二メートル豊かだが、顔には髯ひげがなく、若くて、丸くて、つるつるだった――せいぜい十一歳だろう。
「ホグワーツに入学してすぐに撮とったやつだ」ハグリッドはしゃがれ声で言った。
「親おや父じは大喜びでなあ……俺おれが魔法使いじゃねえかもしれんと思ってたからな。ほれ、お袋のことがあるし……うん、まあ、もちろん、俺はあんまり魔法がうまくはなかったな。うん……しかし、少なくとも、親父は俺が退学になるのを見ねえですんだ。死んじまったからな。二年生んときに……」
「親父が死んでから、俺を支えてくれなさったのがダンブルドアだ。森番の仕事をくださった……人をお信じなさる。あの方は。誰にでもやり直しのチャンスをくださる……そこが、ダンブルドアとほかの校長との違うとこだ。才能さえあれば、ダンブルドアは誰でもホグワーツに受け入れなさる。みんなちゃんと育つってことを知ってなさる。たとえ家か系けいが……その、なんだ……そんなに立派じゃねぇくてもだ。しかし、それが理解できねえやつもいる。生まれ育ちを盾たてにとって、批判するやつが必ずいるもんだ……骨が太いだけだなんて言うやつもいる――『自分は自分だ。恥ずかしくなんかねえ』ってきっぱり言って立ち上がるより、ごまかすんだ。『恥じることはないぞ』って、俺の父ちゃんはよく言ったもんだ。『そのことでおまえを叩たたくやつがいても、そんなやつはこっちが気にする価値もない』ってな。親父は正しかった。俺がばかだった。あの女ひとのことも、もう気にせんぞ。約束する。骨が太いだと……よう言うわ」