ハリー、ロン、ハーマイオニーはそわそわと顔を見合わせた。ハグリッドがマダム・マクシームに話しているのを聞いてしまったと認めるくらいなら、ハリーは「尻しっ尾ぽ爆ばく発はつスクリュート」五十匹を散歩に連れていくほうがましだと思った。しかしハグリッドは、自分がいま変なことを口走ったとも気づかないらしく、しゃべり続けていた。
「ハリー、あのなあ」父親の写真から目を上げたハグリッドが言った。目がキラキラ輝かがやいている。「おまえさんに初めて会ったときなあ、昔の俺に似てると思った。父ちゃんも母ちゃんも死んで、おまえさんはホグワーツなんかでやっていけねえと思っちょった。覚えとるか? そんな資格があるのかどうか、おまえさんは自信がなかったなあ……ところが、ハリー、どうだ! 学校の代表選手だ!」
ハグリッドはハリーをじっと見つめ、それから真ま顔がおで言った。
「ハリーよ、俺がいま心から願っちょるのが何だかわかるか? おまえさんに勝ってほしい。ほんとうに勝ってほしい。みんなに見せてやれ……純じゅん血けつじゃなくてもできるんだってな。自分の生まれを恥じることはねえんだ。ダンブルドアが正しいんだっちゅうことを、みんなに見せてやれる。魔法ができる者なら誰でも入学させるのが正しいってな。ハリー、あの卵はどうなってる?」
「大丈夫」ハリーが言った。「ほんとに大丈夫さ」
ハグリッドのしょぼくれた顔が、パッと涙まみれの笑顔になった。
「それでこそ、俺おれのハリーだ……目にもの見せてやれ。ハリー、みんなに見せてやれ。みんなを負かしっちまえ」
ハグリッドに嘘うそをつくのは、ほかの人に嘘をつくのと同じではなかった。午後も遅くなって、ロンとハーマイオニーと一いっ緒しょに城に戻ったハリーの目に、ハリーが試合で優勝する姿を想像したときに見せた、髭ひげもじゃハグリッドのあのうれしそうな顔が焼きついていた。その夜は、意味のわからない卵がハリーの良心にいちだんと重くのしかかった。ベッドに入るとき、ハリーの心は決まっていた――プライドを一いっ時とき忘れ、セドリックのヒントが役に立つかどうかを試してみるときが来た。