ハリーはあたりを見回しながらさらに中に入った。足音が壁にこだました。浴室はたしかにすばらしかったが――それに、蛇口をいくつか捻ひねってみたいという気持も強かったが――ここに来てみると、セドリックが自分を担かついだのではないかという気持が抑おさえきれなかった。これがいったいどうして卵の謎なぞを解くのに役立つと言うんだ?
それでも、ハリーは、ふわふわのタオルを一枚と、透とう明めいマント、地図、卵を水泳プールのような浴よく槽そうの脇わきに置き、ひざまずいて蛇じゃ口ぐちを一、二本捻ひねってみた。
湯と一いっ緒しょに、蛇口によって違う種類の入浴剤の泡が出てくることがすぐわかった。しかも、これまでハリーが経験したことがないような泡だった。ある蛇口からは、サッカーボールほどもあるピンクとブルーの泡が吹き出し、別の蛇口からは雪のように白い泡が出てきた。白い泡は細かくしっかりとしていて、試しにその上に乗ったら、体を支えて浮かしてくれそうだった。三本目の蛇口からは香りの強い紫むらさきの雲が出てきて、水面にたなびいた。ハリーは蛇口を開けたり閉めたりして、しばらく遊んだ。とりわけ、勢いよく噴出した湯が、水面を大きく弧こを描いて飛び跳はねる蛇口が楽しかった。やがて、深い浴槽も湯と大小さまざまな泡で満たされた(これだけ大きい浴槽にしては、かなり短い時間で一杯になった)。ハリーは蛇口を全部閉め、ガウン、スリッパ、パジャマを脱ぬぎ、湯に浸つかった。
浴槽はとても深く、足がやっと底に届くほどで、ハリーは浴槽の端はしから端まで二、三回泳ぎ、それから、浴槽の縁ふちまで泳いで戻り、立ち泳ぎをして、卵をじっと見た。泡立った温かい湯の中を、色とりどりの湯気が立ち昇る中で泳ぐのはすごく楽しかったが、抜き手を切っても頭は切れず、何の閃ひらめきも思いつきも出てこなかった。