そのとおりだった。ただ、それは、ハリー、ロン、ハーマイオニーが、隠れて「ポリジュース薬やく」を煎せんじるのに、マートルのいる故障中のトイレが好都合だったからだ。「ポリジュース薬」は禁じられた魔法薬で、ハリーとロンがそれを飲み、一時間だけクラッブとゴイルに変身して、スリザリンの談だん話わ室しつに入り込むことができたのだ。
「あそこに行ったことで、叱しかられたんだよ」ハリーが言った。それも半分本当だった。ハリーがマートルのトイレから出てくるところを、パーシーに捕まったことがあった。
「その後は、もうあそこに行かないほうがいいと思ったんだ」
「ふーん……そう」マートルはむっつりと顎あごのにきびをつぶした。「まあ……とにかく……卵は水の中で試すことだわね……セドリック・ディゴリーはそうやったわ」
「セドリックのことも覗のぞき見してたのか?」ハリーは憤ふん然ぜんと言った。「どういうつもりなんだ? 夜な夜なこっそりここに来て、監かん督とく生せいが風呂に入るところを見てるのか?」
「時々ね」マートルがちょっと悪戯いたずらっぽく言った。「だけど、出てきて話をしたことはないわ」
「光栄だね」ハリーは不ふ機き嫌げんな声を出した。「目をつぶってて!」
マートルがメガネをきっちり覆おおうのを確認してから、ハリーは浴よく槽そうを出て、タオルをしっかり巻きつけて、卵を取りに行った。
ハリーが湯に戻ると、マートルは指の間から覗いて「さあ、それじゃ……水の中で開けて」と言った。ハリーは泡だらけの湯の中に卵を沈めて、開けた……すると、こんどは泣き声ではなかった。ゴボゴボという歌声が聞こえてきた。水の中なので、ハリーには歌の文句が聞き取れない。