フィルチの足音が止まった。金属と金属が触ふれ合うカチンという音がして、泣き声が止まった――フィルチが卵を拾って閉じたのだ。ハリーはじっとしていた。片足を騙だまし階段にがっちり挟はさまれたまま、聞き耳を立てた。いまにもフィルチが、タペストリーを押し開けて、ピーブズを探すだろう……そして、ピーブズはいないのだ……しかし、フィルチが階段を上がってくれば、「忍しのびの地ち図ず」が目に入る……透明マントだろうが何だろうが、地図には「ハリー・ポッター」の位置が、まさにいまいる位置に示されている。
「卵?」階段の下で、フィルチが低い声で言った。「チビちゃん!」――ミセス・ノリスが一いっ緒しょにいるに違いない――「こりゃあ、三さん校こう対たい抗こう試じ合あいのヒントじゃないか! 代表選手の所持品だ!」
ハリーは気分が悪くなった。心臓が早はや鐘がねを打っている――。
「ピーブズ!」フィルチがうれしそうに大声を上げた。「おまえは盗みを働いた!」
フィルチがタペストリーをめくり上げた。ハリーはぶくぶく弛たるんだフィルチの恐ろしい顔と飛び出た二つの薄うす青い目とが、誰もいない(ように見える)階段を睨にらんでいるのが見えた。
「隠れてるんだな」フィルチが低い声で言った。「さぁ、取っ捕まえてやるぞ、ピーブズ……三校対抗試合のヒントを盗みに入ったな、ピーブズ……これでダンブルドアはおまえを追い出すぞ。腐くされこそ泥ポルターガイストめ……」
ガリガリの汚れ色の飼かい猫を足あし下もとに従え、フィルチは階段を上りはじめた。ミセス・ノリスのランプのような目が、飼い主そっくりのその目が、しっかりとハリーをとらえていた。ハリーは前にも、透明マントが猫には効きかないのではないかと思ったことがある……古ぼけた、ネルのガウンを着たフィルチがだんだん近づいてくるのを、ハリーは、不安で気分が悪くなりながら見つめていた――挟はさまれた足を必死で引っ張ってはみたが、かえって深く沈むばかりだった――もうすぐだ。フィルチが地図を見つけるか、僕にぶつかるのは――。