「フィルチか? 何をしている?」
ハリーのところより数段下で、フィルチは立ち止まり、振り返った。階段下に立っている姿は、ハリーのピンチをさらに悪化させることのできる唯ゆい一いつの人物――スネイプだ。長い灰色の寝ね巻まきを着て、スネイプはひどく怒っていた。
「スネイプ教きょう授じゅ、ピーブズです」フィルチが毒々しく囁ささやいた。「あいつがこの卵を、階段の上から転がして落としたのです」
スネイプは急いで階段を上り、フィルチのそばで止まった。ハリーは歯を食いしばった。心臓のドキドキという大きな音が、いまにもハリーの居場所を教えてしまうに違いない。
「ピーブズだと?」フィルチの手にした卵を見つめながら、スネイプが低い声で言った。「しかし、ピーブズは我わが輩はいの研究室に入れまい……」
「卵は教きょう授じゅの研究室にあったのでございますか?」
「もちろん、違う」スネイプがバシッと言った。「バンバンという音と、泣き叫さけぶ声が聞こえたのだ――」
「はい、教授、それは卵が――」
「――我輩は調べに来たのだ――」
「――ピーブズめが投げたのです。教授――」
「――そして、研究室の前を通ったとき、松たい明まつの火が点ともり、戸と棚だなの扉とびらが半開きになっているのを見つけたのだ! 誰かが引ひっ掻かき回していった!」
「しかし、ピーブズめにはできないはずで――」
「そんなことはわかっておる!」スネイプがまたバシッと言った。「我輩の研究室は、呪じゅ文もんで封ふう印いんしてある。魔法使い以外は破れん!」スネイプはハリーの体をまっすぐに通り抜ける視し線せんで階段を見上げた。それから下の廊ろう下かを見下ろした。「フィルチ、一いっ緒しょに来て侵しん入にゅう者しゃを捜そう索さくするのだ」
「わたくしは――はい、教授――しかし――」