「ポッター……」ムーディがゆっくり口を開いた。「スネイプの研究室に誰が忍び込んだか、もしや、おまえ、見なんだか? この地図の上でという意味だが?」
「え……あの、見ました……」ハリーは正直に言った。「クラウチさんでした」
ムーディの「魔法の目」が、地図の隅すみ々ずみまで飛ぶように眺ながめた。そして、突然警けい戒かいするような表情が浮かんだ。
「クラウチとな? それは――それは確かか? ポッター?」
「間違いありません」ハリーが答えた。
「ふむ。やつはもうここにはいない」「魔法の目」を地図の上に走らせたまま、ムーディが言った。「クラウチ……それは、まっこと――まっこと、おもしろい……」
ムーディは地図を睨にらんだまま、それから一分ほど何も言わなかった。ハリーは、このニュースがムーディにとって何か特別な意味があるのだとわかった。それが何なのか知りたくてたまらなかった。聞いてみようか? ムーディはちょっと怖こわい……でも、たったいま、ムーディは僕をたいへんな危き機きから救ってくれた……。
「あの……ムーディ先生……クラウチさんは、どうしてスネイプの研究室を探し回っていたのでしょう?」
ムーディの「魔法の目」が地図から離れ、プルプル揺ゆれながらハリーを見み据すえた。鋭するどく突き抜けるような視し線せんだ。答えるべきか否いなか、どの程度ハリーに話すべきなのか、ムーディはハリーの品定めをしているようだった。
「ポッター、つまり、こういうことだ」ムーディがやっとぼそりと口を開いた。「老いぼれマッド‐アイは闇やみの魔法使いを捕らえることに取り憑つかれている、と人は言う……しかし、わしなどはまだ小こ者ものよ……まったくの小者よ……バーティ・クラウチに比べれば」
ムーディは地図を見つめたままだった。ハリーはもっと知りたくてうずうずした。
「ムーディ先生?」ハリーはまた聞いた。「もしかして……関係があるかどうか……クラウチさんは、何かが起こりつつあると考えたのでは……」
「どんなことかね?」ムーディが鋭く聞いた。
ハリーはどこまで言うべきか迷った。ムーディに、ハリーにはホグワーツの外に情報源があると、悟さとられたくなかった。それがシリウスに関する質問に結びついたりすると、危険だ。