「わかりません」ハリーが呟つぶやいた。「最近変なことが起こっているでしょう? 『日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん』に載のっています……ワールドカップでの『闇やみの印しるし』とか、『死し喰くい人びと』とか……」
ムーディはちぐはぐな目を、両方とも見開いた。
「おまえは聡さとい子だ、ポッター」そう言うと、ムーディの「魔法の目」はまた「忍しのびの地ち図ず」に戻った。
「クラウチもその線を追っているのだろう」ムーディがゆっくりと言った。「たしかにそうかもしれない……最近奇妙な噂うわさが飛び交かっておる――リータ・スキーターが煽あおっていることも確かだが。どうも、人じん心しんが動どう揺ようしておる」
歪ゆがんだ口元にぞっとするような笑いが浮かんだ。
「いや、わしがいちばん憎いのは――」ムーディはハリーにというより、自分自身に言うように呟いた。「魔法の目」が地図の左下に釘くぎづけになっている。「野の放ばなしになっている『死喰い人』よ……」
ハリーはムーディを見つめた。ムーディが言ったことが、ハリーの考えるような意味だとしたら?
「さて、ポッター、こんどはわしがおまえに聞く番だ」ムーディが感情抜きの言い方をした。
ハリーはドキリとした。こうなると思った。ムーディは、怪あやしげな魔法の品であるこの地図をどこで手に入れたか、と聞くに違いない――どうしてハリーの手に入ったかの経いき緯さつを話せば、ハリーばかりでなく、ハリーの父親も、フレッド、ジョージ・ウィーズリーも、去年「闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ」を教えたルーピン先生も巻き込むことになる。ムーディは地図をハリーの目の前で振った。ハリーは身み構がまえた――。
「これを貸してくれるか?」
「え?」ハリーはこの地図が好きだった。しかし、ムーディが地図をどこで手に入れたかと聞かなかったので、大いにほっとした。それに、ムーディに借りがあるのも確かだ。
「ええ、いいですよ」
「いい子だ」ムーディが唸うなった。「これはわしの役に立つ……これこそ、わしが求めていたものかもしれん……よし、ポッター、ベッドだ、さあ、行くか……」