そしてハリーは、もう一生図書室を見たくないほどうんざりした気分になりながら、またしても埃ほこりっぽい本の山に埋もれて、酸素なしでもヒトが生き残れる呪文はないかと探した。ハリーも、ロンも、ハーマイオニーも、昼食時、夜、週末全部を通して探しまくったが――ハリーはマクゴナガル先生に願い出て、禁きん書しょの棚たなを利用する許可までもらったし、怒りっぽい、ハゲタカに似た司し書しょのマダム・ピンスにさえ助けを求めたにもかかわらず――ハリーが水中で一時間生き延のびて、それを後のち々のちの語り種ぐさにすることができるような手段はまったく見つからなかった。
あの胸騒ぎのような恐怖感が、またハリーを悩ませはじめ、授業に集中することができなくなっていた。校庭の景色の一部として、何の気なしに見ていた湖が、教室の窓近くに座るたびにハリーの目を引いた。湖は、いまや鋼はがねのように灰色の冷たい水を湛たたえた巨大な物体に見え、その暗く冷たい水みな底そこは、月ほどに遠く感じられた。
ホーンテールとの対決を控ひかえたときと同じく、時間が滑すべり抜けていった。誰かが時計に魔法をかけ、超特急で進めているかのようだった。二月二十四日まであと一週間(まだ時間はある)……あと五日(もうすぐ何かが見つかるはずだ)……あと三日(お願いだから、何か教えて……お願い……)。
あと二日に迫せまったとき、ハリーはまた食欲がなくなりはじめた。月曜の朝食でたった一つよかったのは、シリウスに送った茶モリフクロウが戻ってきたことだった。羊よう皮ひ紙しをもぎ取り、広げると、これまでのシリウスからの手紙の中でいちばん短い手紙だった。
返信ふくろう便で、次のホグズミード行きの日を知らせよ
ハリーはほかに何かないかと、羊皮紙をひっくり返したが、白紙だった。