「談だん話わ室しつで会いましょう」ハーマイオニーはそう言うと、ロンと一いっ緒しょに席を立った――二人ともとても心配そうだった。「ここにある本、できるだけたくさん持ち帰ってね。いい?」
「わかった」ハリーも不安だった。
八時になると、マダム・ピンスがランプを全部消し、ハリーを巧たくみに図書室から追い出した。本を持てるだけ持って、重みでよろけながら、ハリーはグリフィンドールの談話室に戻った。テーブルを片かた隅すみに引っ張ってきて、ハリーはさらに調べ続けた。「突とっ飛ぴな魔法戦士のための突飛な魔法」には何もない……「中世の魔ま術じゅつガイドブック」もだめ……「十八世紀の呪じゅ文もん選集せんしゅう」には水中での武ぶ勇ゆう伝でんは皆無だ……「深い水みな底そこの不ふ可か解かいな住人」も、「気づかず持ってるあなたの力、気づいたいまはどう使う」にも何もない。
クルックシャンクスがハリーの膝ひざに乗って丸くなり、低い声で喉のどを鳴らした。談話室のハリーの周りは、だんだん人がいなくなった。みんな、明日はがんばれと、ハグリッドと同じように明るい、信じきった声で応おう援えんして出ていった。みんながみんな、第一の課題で見せたと同じ、目の覚めるような技をハリーが繰り出してくれるのだろうと、信じきっているようだ。ハリーは声援を受けても答えられなかった。ゴルフボールが喉に詰まったかのように、ただコックリするだけだった。あと十分で真夜中というとき、談だん話わ室しつはハリーとクルックシャンクスだけになった。持ってきた本は全部調べた。しかし、ロンとハーマイオニーは戻ってきていない。
おしまいだ。ハリーは自分に言い聞かせた。できない。明日の朝、湖まで行って、審しん査さ員いんにそう言うほかない……。
ハリーは、課題ができませんと審査員に説明している自分の姿を想像した。バグマンが目を丸くして驚く顔が浮かぶ。カルカロフは、満足げに黄色い歯を見せてほくそ笑む。フラー・デラクールの声が聞こえるようだ。「わたし、わかってまーした……あのいひと、わかすぎまーす。あのいひと、まだちいさな子供でーす」マルフォイが観客席の最前列で、「汚いぞ、ポッター」バッジをチカチカ光らせているのが見える。ハグリッドが、信じられないという顔で、打ち萎しおれている……。