ハリーの疑いは消えた。ハリーは勢いよく立ち上がり、透とう明めいマントを脱ぬぎカバンに丸めて入れ、鰓昆布をつかんでポケットに突っ込み、飛ぶように図書室を出た。ドビーがすぐあとについて出た。
「ドビーは厨房ちゅうぼうに戻らなければならないのでございます!」二人でワッと廊ろう下かに飛び出したとき、ドビーがキーキー言った。「ドビーがいないことに気づかれてしまいますから――がんばって、ハリー・ポッター、どうぞ、がんばって!」
「あとでね、ドビー!」そう叫さけぶと、ハリーは全速力で廊下を駆かけ抜け、階段を三段飛ばしで下りた。
玄げん関かんホールにはまだ数人まごまごしていた。みんな大おお広ひろ間までの朝食を終え、樫かしの両開き扉とびらを通って第二の課題を観かん戦せんしに出かけるところだった。ハリーがそのそばを矢のように駆け抜け、石段を飛び下りる勢いでコリンとデニス・クリービーを宙に舞い上げ、眩まばゆい、肌寒い校庭にダッシュしていくのを、みんな呆あっ気けに取られて見ていた。
芝しば生ふを踏ふんで駆け下りながら、ハリーは、十一月にはドラゴンの囲い地の周りに作られていた観客席が、こんどは湖の反対側の岸辺に沿って築かれているのを見た。何段にも組み上げられたスタンドは超満員で、下の湖に影を映していた。大観衆の興こう奮ふんしたガヤガヤ声が、湖面を渡って不思議に反響はんきょうするのを聞きながら、ハリーは全速力で湖の反対側に走り込み、審しん査さ員いん席に近づいた。水み際ぎわに金色の垂たれ布で覆おおわれたテーブルが置かれ、審査員が着席していた。セドリック、フラー、クラムが審査員席のそばで、ハリーが疾しっ走そうしてくるのを見ていた。