「到着とうちゃく……しました……」
ハリーは泥に足を取られながら急きゅう停てい止しし、弾はずみでフラーのローブに泥を撥はねてしまった。
「いったい、どこに行ってたんだ?」威い張ばった、非難がましい声がした。「課題がまもなく始まるというのに!」
ハリーはきょろきょろ見回した。審査員席に、パーシー・ウィーズリーが座っていた――クラウチ氏はまたしても出席していない。
「まあ、まあ、パーシー!」ルード・バグマンだ。ハリーを見て心しん底そこほっとした様子だった。「息ぐらいつかせてやれ!」
ダンブルドアはハリーに微ほほ笑えみかけたが、カルカロフとマダム・マクシームは、ハリーの到着をまったく喜んでいなかった……ハリーはもう来ないだろうと思っていたことが、表情からはっきり読み取れた。
ハリーは両手を膝ひざに置き、前屈かがみになってゼイゼイと息を切らしていた。肋ろっ骨こつにナイフを刺さし込まれたみたいに、脇わき腹ばらがキリキリ痛んだ。しかし、治まるまで待っている時間はない。ルード・バグマンが動き回り、湖の岸に沿って、三メートル間隔に選手を立たせた。ハリーはいちばん端はしで、クラムの隣となりだった。クラムは水泳パンツを履はき、すでに杖つえを構えていた。
「大丈夫か? ハリー?」ハリーをクラムの三メートル隣からさらに数十センチ離して立たせながら、バグマンが囁ささやいた。「何をすべきか、わかってるね?」
「ええ」ハリーは胸をさすり、喘あえぎながら言った。
バグマンはハリーの肩をぎゅっと握り、審しん査さ員いん席に戻った。そして、ワールドカップのときと同じように、杖を自分の喉のどに向け、「ソノーラス! 響ひびけ!」と言った。バグマンの声が暗い水面みなもを渡り、スタンドに轟とどろいた。
「さて、全選手の準備ができました。第二の課題はわたしのホイッスルを合図に始まります。選手たちは、きっちり一時間のうちに奪うばわれたものを取り返します。では、三つ数えます。いーち……にー……さん!」