「われらは助けはせぬ」厳きびしい、しわがれた声だ。
「お願いだ!」ハリーは強い口調で言った(しかし、口から出るのは泡あぶくばかりだった)。槍を引っ張って、水中人の手から奪うばい取ろうとしたが、水中人はぐいと引いて、首を振りながらまだ笑っていた。
ハリーはぐるぐる回りながら、目を凝こらしてあたりを見た。何か尖とがった物はないか……何かないか……。湖底には石が散乱していた。ハリーは潜っていちばんギザギザした石を拾い、石像のところへ戻った。ロンを縛しばりつけているロープに石を打ちつけ、数分間の苦労の末、ロープを叩たたき切った。ロンは気を失ったまま、湖底から十数センチのところに浮かび、水の流れに乗ってゆらゆら漂ただよっていた。
ハリーはきょろきょろあたりを見回した。ほかの代表選手が来る気配がない。何をもたもたしてるんだ? どうして早く来ない? ハリーはハーマイオニーのほうに向き直り、同じ石で縄なわ目めを叩き切りはじめた――。
たちまち屈強くっきょうな灰色の手が数本、ハリーを押さえた。五、六人の水中人が、緑の髪かみを振り立て、声を上げて笑いながら、ハリーをハーマイオニーから引き離そうとしていた。
「自分の人質だけを連れていけ」一人が言った。「ほかの者は放っておけ……」
「それは、できない!」ハリーが激はげしい口調で言った――しかし、大きな泡あぶくが二つ出てきただけだった。
「おまえの課題は、自分の友人を取り返すことだ……ほかにかまうな……」
「この子も僕の友達だ!」ハーマイオニーを指差して、ハリーが叫さけんだ。巨大な銀色の泡が一つ、音もなくハリーの唇くちびるから現れた。「それに、ほかの子たちも死なせるわけにはいかない!」