「こっちへ。ほら」マダム・ポンフリーの声がした。ハリーを捕まえると、マダム・ポンフリーは、ハーマイオニーやほかの人がいるところにハリーを引っ張ってきて、毛布に包んだ。あまりにきっちり包まれて、ハリーは身動きができなかった。熱い煎せんじ薬ぐすりを一杯、喉のどに流し込まれると、ハリーの耳から湯気が噴き出した。
「よくやったわ、ハリー!」ハーマイオニーが叫さけんだ。「できたのね。自分一人でやり方を見つけたのね!」
「えーと――」ハリーは口ごもった。ドビーのことを話すつもりだった。しかし、そのとき、カルカロフがハリーを見つめているのに気づいた。カルカロフはただ一人、審しん査さ員いん席を離れていない。ハリー、ロン、フラーの妹が無事戻ったことに、カルカロフだけが、喜びも安あん堵どした素そ振ぶりも見せていない。
「うん、そうさ」ハリーは、カルカロフに聞こえるように、少し声を張り上げた。
「髪かみにゲンゴロウがついているよ、ハーム‐オウン‐ニニー」クラムが言った。
クラムはハーマイオニーの関心を取り戻そうとしている、とハリーは感じた。たったいま、湖から君を救い出したのは僕だよ、と言いたいのだろう。しかし、ハーマイオニーは、うるさそうにゲンゴロウを髪から払い除け、こう言った。
「でも、あなた、制限時間をずいぶんオーバーしたのよ、ハリー……私たちを見つけるのに、そんなに長くかかったの?」
「ううん……ちゃんと見つけたけど……」ばかだったという気持が募つのった。ダンブルドアが安全対策を講こうじていて、代表選手が現れなかったからといって人質を死なせたりするはずがない。水から上がってみると、そんなことは明めい々めい白はく々はくだと思えた。ロンだけを取り返して戻ってくればよかったのに。自分が一番で戻れたのに……。セドリックやクラムは、ほかの人質のことを心配して時間をむだにしたりしなかった。水中人の歌を真まに受けたりしなかった……。