マルフォイ、クラッブ、ゴイルが、パンジー・パーキンソンの率ひきいるスリザリンの女子生徒と一いっ緒しょに、教室のドアの前に群がっていた。ハリーのところからは見えない何かを見て、みんなで思いっ切りくすくす笑いをしている。ハリー、ロン、ハーマイオニーが近づくと、ゴイルのだだっ広い背中の陰から、パンジーのパグ犬そっくりの顔が、興こう奮ふんしてこっちを覗のぞいた。
「来た、来た!」パンジーがクスクス笑った。すると塊かたまっていたスリザリン生の群れがパッと割れた。パンジーが手にした雑誌が、ハリーの目に入った――「週しゅう刊かん魔ま女じょ」だ。表紙の動く写真は巻き毛の魔女で、ニッコリ歯を見せて笑い、杖つえで大きなスポンジケーキを指している。
「あなたの関心がありそうな記事が載のってるわよ、グレンジャー!」パンジーが大声でそう言いながら、雑誌をハーマイオニーに投げてよこした。ハーマイオニーは驚いたような顔で受け取った。そのとき、地下牢のドアが開いて、スネイプがみんなに入れと合図した。
ハーマイオニー、ハリー、ロンは、いつものように地下牢教室のいちばん後ろに向かった。スネイプが、今日の魔法薬の材料を黒板に書くのに後ろを向いたとたん、ハーマイオニーは急いで机の下で雑誌をパラパラめくった。ついに、真ん中のページに、ハーマイオニーは探していた記事を見つけた。ハリーとロンも横から覗き込んだ。ハリーのカラー写真の下に、短い記事が載り、「ハリー・ポッターの密ひそやかな胸の痛み」と題がついている。
ほかの少年とは違う。そうかもしれない――しかしやはり少年だ。あらゆる青春の痛みを感じている。と、リータ・スキーターは書いている。両親の悲ひ劇げき的てきな死以来、愛を奪われた十四歳のハリー・ポッターは、ホグワーツでマグル出身のハーマイオニー・グレンジャーというガールフレンドを得て、安らぎを見出していた。すでに痛みに満ちたその人生で、やがてまた一つの心の痛手を味わうことになろうとは、少年は知る由よしもなかったのである。
ミス・グレンジャーは、美しいとは言いがたいが、有名な魔法使いがお好みの野心家で、ハリーだけでは満足できないらしい。先ごろ行われたクィディッチ・ワールドカップのヒーローで、ブルガリアのシーカー、ビクトール・クラムがホグワーツにやって来て以来、ミス・グレンジャーは二人の少年の愛情をもてあそんできた。クラムが、この擦すれっ枯からしのミス・グレンジャーに首ったけなのは公おおやけの事実だが、夏休みにブルガリアに来てくれとすでに招待している。クラムは、「こんな気持をほかの女の子に感じたことはない」とはっきり言った。
しかしながら、この不幸な少年たちの心をつかんだのは、ミス・グレンジャーの自然な魅み力りょく(それも大した魅力ではないが)ではないかもしれない。
「あの子、ブスよ」活発でかわいらしい四年生のパンジー・パーキンソンは、そう言う。「だけど、『愛の妙薬みょうやく』を調合することは考えたかもしれない。頭でっかちだから。たぶん、そうしたんだと思うわ」
「愛の妙薬みょうやく」はもちろん、ホグワーツでは禁じられている。アルバス・ダンブルドアは、この件の調査に乗り出すべきであろう。しばらくの間、ハリーの応おう援えん団だんとしては、次にはもっとふさわしい相手に心を捧ささげることを、願うばかりである。