「だから言ったじゃないか!」記事をじっと見下ろしているハーマイオニーに、ロンが歯ぎしりしながら囁ささやいた。
「リータ・スキーターにかまうなって、そう言ったろう! あいつ、君のことを、何ていうか――緋色のおべべ扱いだ!」
愕がく然ぜんとしていたハーマイオニーの表情が崩くずれ、プッと吹き出した。
「緋色のおべべ?」ハーマイオニーはロンのほうを見て、体を震ふるわせてくすくす笑いをこらえていた。
「ママがそう呼ぶんだ。その手の女の人を」ロンはまた耳を真っ赤にしてボソボソ呟つぶやいた。
「せいぜいこの程度なら、リータも衰おとろえたものね」ハーマイオニーはまだクスクス笑いながら、隣となりの空あいた椅子に「週しゅう刊かん魔ま女じょ」を放り出した。「ばかばかしいの一言だわ」
ハーマイオニーはスリザリンのほうを見た。スリザリン生はみな、記事の嫌いやがらせ効果は上がったかと、教室の向こうからハーマイオニーとハリーの様子をじっと窺うかがっていた。ハーマイオニーは皮ひ肉にくっぽく微ほほ笑えんで、手を振った。そして、ハーマイオニー、ハリー、ロンは「頭あたま冴さえ薬ぐすり」に必要な材料を広げはじめた。
「だけど、ちょっと変だわね」十分後、タマオシコガネの入った乳鉢にゅうばちの上で乳棒を持った手を休め、ハーマイオニーが言った。「リータ・スキーターはどうして知ってたのかしら……?」
「何を?」ロンが聞き返した。「君、まさか『愛の妙薬』調合してなかったろうな」
「バカ言わないで」ハーマイオニーはパシッと言って、またタマオシコガネをトントンつぶしはじめた。「違うわよ。ただ……夏休みに来てくれって、ビクトールが私に言ったこと、どうして知ってるのかしら?」
そう言いながら、ハーマイオニーの顔が緋色になった。そして、意識的にロンの目を避さけていた。