怒りに震ふるえながら、ハリーは材料とカバンを大おお鍋なべに放り込み、空席になっている地下牢教室のいちばん前のテーブルに鍋を引きずっていった。スネイプがあとからついてきて、自分の机の前に座り、ハリーが鍋の中身を出すのをじっと見ていた。わざとスネイプと目を合わさないようにしながら、ハリーはタマオシコガネつぶしを続けた。タマオシコガネの一つひとつをスネイプの顔だと思いながらつぶした。
「マスコミに注目されて、おまえのデッカチ頭がさらに膨ふくれ上がったようだな。ポッター」
クラスが落ち着きを取り戻すと、スネイプが低い声で言った。
ハリーは答えなかった。スネイプが挑発ちょうはつしようとしているのはわかっていた。これが初めてではない。授業が終わる前に、グリフィンドールからまるまる五十点減点する口実を作りたいに違いない。
「魔法界全体が君に感かん服ぷくしているという妄もう想そうに取り憑つかれているのだろう」スネイプはハリー以外には聞こえないような低い声で話し続けた(タマオシコガネはもう細かい粉こなになっていたが、ハリーはまだ叩たたきつぶし続けていた)。「しかし、我わが輩はいは、おまえの写真が何度新聞に載のろうと、何とも思わん。我輩にとって、ポッター、おまえは単に、規則を見下している性悪しょうわるの小こ童わっぱだ」
ハリーはタマオシコガネの粉末を大鍋に空あけ、根ね生しょう姜がを刻きざみはじめた。怒りで手が少し震ふるえていたが、目を伏ふせ、スネイプの言うことが聞こえないふりをしていた。
「そこで、きちんと警けい告こくしておくぞ。ポッター」スネイプはますます声を落とし、いちだんと危険な声で話し続けた。「小こ粒つぶでもピリリの有名人であろうがなんだろうが――こんど我輩の研究室に忍び込んだところを捕まえたら――」
「僕、先生の研究室に近づいたことなどありません」聞こえないふりも忘れ、ハリーは怒ったように言った。
「我輩に嘘うそは通じない」スネイプは歯を食いしばったまま言った。底知れない暗い目が、ハリーの目を抉えぐるように覗のぞき込んだ。「毒ツルヘビの皮。鰓えら昆こん布ぶ。どちらも我輩個人の保ほ管かん庫このものだ。誰が盗んだかはわかっている」