「何のことか僕にはわかりません」ハリーは冷静に嘘をついた。
「おまえは、我輩の研究室に侵しん入にゅう者しゃがあった夜、ベッドを抜け出していた」スネイプのヒソヒソ声が続いた。「わかっているぞ、ポッター! こんどはマッド‐アイ・ムーディがおまえのファンクラブに入ったらしいが、我輩はおまえの行動を許さん! もう一度我輩の研究室に、夜中に入り込むことがあれば、ポッター、つけを払う羽は目めになるぞ!」
「わかりました」ハリーは冷静にそう言うと、根ね生しょう姜が刻きざみに戻った。「どうしてもそこに行きたいという気持になることがあれば、覚えておきます」
スネイプの目が光り、黒いローブに手を突っ込んだ。ハリーは一瞬いっしゅんドキリとした。スネイプが杖つえを取り出し、ハリーに呪のろいをかけるのではないかと思ったのだ――しかし、スネイプが取り出したのは、透すき通った液体の入った小さなクリスタルの瓶びんだった。ハリーはじっと瓶を見つめた。
「何だかわかるか、ポッター」スネイプの目が再び怪しげに光った。
「いいえ」こんどはハリーは真っ正直に答えた。
「ベリタセラム――真しん実じつ薬やくだ。強力で、三滴てきあれば、おまえは心の奥底にある秘ひ密みつを、このクラス中に聞こえるようにしゃべることになる」スネイプが毒々しく言った。
「さて、この薬の使用は、魔ま法ほう省しょうの指針で厳きびしく制限されている。しかし、おまえが足あし下もとに気をつけないと、我わが輩はいの手が『滑すべる』ことになるぞ――」スネイプはクリスタルの瓶をわずかに振った。「――おまえの夕食のかぼちゃジュースの真上で。そうすれば、ポッター……そうすれば、おまえが我輩の研究室に入ったかどうかわかるだろう」