ハリーは黙だまっていた。もう一度根ね生しょう姜がの作業に戻り、ナイフを取って薄うす切ぎりにしはじめた。「真実薬」なんて、嫌いやなことを聞いた。スネイプなら手が「滑って」飲ませるくらいのことはやりかねない。そんなことになったら、自分の口から何が漏もれるか、ハリーは考えるだけで震ふるえが来るのをやっと抑えつけた……いろんな人をトラブルに巻き込んでしまう――手始めにハーマイオニーとドビーのことだ――そればかりか、ほかにも隠していることはたくさんある……シリウスと連れん絡らくを取り合っていること……それに――チョウへの思い――そう考えると内臓が捻よじれた……ハリーは根生姜も大おお鍋なべに入れた。ムーディを見習うべきかもしれない、とハリーは思った。これからは自分用の携けい帯たい瓶びんからしか飲まないようにするのだ。
地ち下か牢ろう教室の戸をノックする音がした。
「入れ」スネイプがいつもどおりの声で言った。
戸が開くのをクラス全員が振り返って見た。カルカロフ校長だった。スネイプの机に向かって歩いてくるのを、みんなが見つめた。ヤギ鬚ひげを指で捻ねじり捻り、カルカロフはなにやら興こう奮ふんしていた。
「話がある」カルカロフはスネイプのところまで来ると、出し抜けに言った。自分の言っていることを誰にも聞かれないように、カルカロフはほとんど唇くちびるを動かさずにしゃべっていた。下へ手たな腹ふく話わ術じゅつ師しのようだった。ハリーは根生姜に眼めを落としたまま、耳をそばだてた。
「授業が終わってから話そう、カルカロフ――」スネイプが呟つぶやくように言った。しかし、カルカロフはそれを遮さえぎった。
「いま話したい。セブルス、君が逃げられないときに。君はわたしを避さけ続けている」
「授業のあとだ」スネイプがピシャリと言った。