翌日、三人は正午に城を出た。校庭を淡あわい銀色の太陽が照らしていた。これまでになく穏やかな天気で、ホグズミードに着くころには、三人ともマントを脱ぬいで片方の肩に引っかけていた。シリウスが持ってこいと言った食料は、ハリーのカバンに入っている。鳥の足を十二本、パン一本、かぼちゃジュース一ひと瓶びんを、昼食のテーブルからくすねておいたのだ。
三人でグラドラグス・魔法ファッション店に入り、ドビーへのみやげを買った。思いっ切りケバケバしい靴くつ下したを選ぶのはおもしろかった。金と銀の星が点てん滅めつする柄がらや、あんまり臭くなると大声で叫さけぶ靴下もあった。一時半、三人はハイストリート通りを歩き、ダービシュ・アンド・バングズ店を通り過ぎ、村のはずれに向かっていた。
ハリーはこっちのほうには来たことがなかった。曲りくねった小道が、ホグズミードを囲む荒涼こうりょうとした郊外へと続いていた。住宅もこのあたりはまばらで、庭は大きめだった。三人は山の麓ふもとに向かって歩いていた。ホグズミードはその山やま懐ふところにある。そこで角を曲がると、道のはずれに柵さくがあった。いちばん高い柵に二本の前脚を載のせ、新聞らしいものを口にくわえて三人を待っている大きな毛むくじゃらの黒い犬がいた。見覚えのある、懐かしい姿……。
「やあ、シリウスおじさん」そばまで行って、ハリーが挨あい拶さつした。
黒い犬はハリーのカバンを夢中で嗅かぎ、尻しっ尾ぽを一度だけ振り、向きを変えてトコトコ走り出した。あたりは低てい木ぼくが茂り、上り坂で、行く手は岩だらけの山の麓ふもとだ。ハリー、ロン、ハーマイオニーは、柵さくを乗り越えてあとを追った。