「チキン!」くわえていた「日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」の古新聞を口から離し、洞窟の床に落とした後、シリウスはかすれた声で言った。
ハリーはカバンをパッと開け、鳥の足をひとつかみと、パンを渡した。
「ありがとう」そう言うなり、シリウスは包みを開け、鳥の足をつかみ、洞どう窟くつの床に座り込んで、歯で大きく食いちぎった。
「ほとんどネズミばかり食べて生きていた。ホグズミードからあまりたくさん食べ物を盗むわけにもいかない。注意を引くことになるからね」シリウスはハリーにニッコリした。ハリーも笑いを返したが、心から笑う気持にはなれなかった。
「シリウスおじさん、どうしてこんなところにいるの?」ハリーが言った。
「名付け親としての役目を果たしている」シリウスは、犬のようなしぐさで鳥の骨をかじった。「わたしのことは心配しなくていい。愛すべき野良犬のふりをしているから」
シリウスはまだ微ほほ笑えんでいた。しかし、ハリーの心配そうな表情を見て、さらに真剣に言葉を続けた。
「わたしは現場にいたいのだ。君が最後にくれた手紙……そう、ますますきな臭くなっているとだけ言っておこう。誰かが新聞を捨てるたびに拾っていたのだが、どうやら、心配しているのはわたしだけではないようだ」
シリウスは洞どう窟くつの床にある、黄色く変色した「日刊予言者新聞」を顎あごで指した。ロンが何枚か拾い上げて広げた。
しかし、ハリーはまだシリウスを見つめ続けていた。
「捕まったらどうするの? 姿を見られたら?」
「わたしが『動物もどきアニメーガス』だと知っているのは、ここでは君たち三人とダンブルドアだけだ」
シリウスは肩をすくめ、鳥の足を貪むさぼり続けた。