「ほかには?」シリウスが聞いた。
「ほかにはいない」ハリーが言った。
「いたわ。いたわよ。ルード・バグマンが」ハーマイオニーがハリーに教えた。
「ああ、そうだった……」
「バグマンのことはよく知らないな。ウイムボーン・ワスプスのビーターだったこと以外は」シリウスはまだ歩き続けながら言った。「どんな人だ?」
「あの人は大丈夫だよ」ハリーが言った。「三さん校こう対たい抗こう試じ合あいで、いつも僕を助けたいって言うんだ」
「そんなことを言うのか?」シリウスはますます眉根に皺を寄せた。「なぜそんなことをするのだろう?」
「僕のことを気に入ったって言うんだ」ハリーが言った。
「ふぅむ」シリウスは考え込んだ。
「『闇の印』が現われる直前に、私たち森でバグマンに出会ったわ」ハーマイオニーがシリウスに教えた。
「憶おぼえてる?」ハーマイオニーはハリーとロンに言った。
「うん。でも、バグマンは森に残ったわけじゃないだろ?」ロンが言った。「騒ぎのことを言ったら、バグマンはすぐにキャンプ場に行ったよ」
「どうしてそう言える?」ハーマイオニーが切り返した。「『姿すがたくらまし』したのに、どうして行き先がわかるの?」
「やめろよ」ロンは信じられないという口調だ。「ルード・バグマンが『闇やみの印しるし』を創つくり出したと言いたいのか?」
「ウィンキーよりは可能性があるわ」ハーマイオニーは頑がん固こに言い張った。
「言ったよね?」ロンが意味ありげにシリウスを見た。「言ったよね。ハーマイオニーが取り憑つかれてるって、屋や敷しき……」
しかし、シリウスは手を上げてロンを黙だまらせた。
「『闇の印』が現れて、妖よう精せいがハリーの杖つえを持ったまま発見されたとき、クラウチは何をしたかね?」
「茂みの様子を見にいった」ハリーが答えた。「でも、そこには何にもなかった」
「そうだろうとも」シリウスは、往いったり来たりしながら呟つぶやいた。「そうだろうとも。クラウチは自分のしもべ妖精以外の誰かだと決めつけたかっただろうな……それで、しもべ妖精をクビにしたのかね?」
「そうよ」ハーマイオニーの声が熱くなった。「クビにしたのよ。テントに残って、踏ふみつぶされるままになっていなかったのがいけないっていうわけ――」
「ハーマイオニー、頼むよ、妖精のことはちょっと放っといてくれ!」ロンが言った。
しかし、シリウスは頭を振ってこう言った。