「自分の息子が本当に『死喰い人』だったの?」ハリーが聞いた。
「わからない」シリウスはまだパンを貪むさぼっていた。
「息子がアズカバンに連れてこられたとき、わたし自身もアズカバンにいた。いま話していることは、大部分アズカバンを出てからわかったことだ。あのとき捕まったのは、たしかに『死し喰くい人びと』だった。わたしの首を賭かけてもいい。あの子がその連中と一緒に捕まったのも確かだ――しかし、屋や敷しきしもべと同じように、単に、運悪くその場に居合わせただけかもしれない」
「クラウチは自分の子の罰ばつを逃のがれさせようとしたの?」ハーマイオニーが小さな声で聞いた。
シリウスは犬の吠ほえ声のような笑い方をした。
「クラウチが自分の息子に罰を逃れさせる? ハーマイオニー、君にはあいつの本性ほんしょうがわかっていると思ったんだが? 少しでも自分の評判を傷きずつけるようなことは消してしまうやつだ。魔ま法ほう大だい臣じんになることに一生をかけてきた男だよ。献けん身しん的てきなしもべ妖よう精せいをクビにするのを見ただろう。しもべ妖精が、またしても自分と『闇やみの印しるし』とを結びつけるようなことをしたからだ――それでやつの正体がわかるだろう? クラウチがせいぜい父親らしい愛情を見せたのは、息子を裁判にかけることだった。それとて、どう考えても、クラウチがどんなにその子を憎んでいるかを公おおやけに見せるための口実にすぎなかった……それから息子をまっすぐアズカバン送りにした」
「自分の息子を『吸きゅう魂こん鬼き』に?」ハリーは声を落とした。
「そのとおり」シリウスはもう笑ってはいなかった。「『吸魂鬼』が息子を連れてくるのを見たよ、独どく房ぼうの鉄てつ格ごう子しを通して。十九歳になるかならないかだったろう。わたしの房に近い独房に入れられた。その日が暮れるころには、母親を呼んで泣き叫さけんだ。二、三日するとおとなしくなったがね……みんなしまいには静かになったものだ……眠っているときに悲ひ鳴めいを上げる以外は……」
一瞬いっしゅん、シリウスの目に生せい気きがなくなった。まるで目の奥にシャッターが下りたような暗さだ。