長い沈ちん黙もくが流れた。ハリーは、クィディッチ・ワールドカップのとき、森の中で、自分に従わなかった屋や敷しきしもべ妖よう精せいを見下ろしたときの、目が飛び出したクラウチの顔を思い浮かべていた。すると、ウィンキーが「闇やみの印しるし」の下で発見されたとき、クラウチが過剰な反応を示したのには、こんな事情があったのか。息子の思い出が、昔の醜聞しゅうぶんが、そして魔法省での没落が甦よみがえったのか。
「ムーディは、クラウチが闇の魔法使いを捕まえることに取り憑つかれているって言ってた」
ハリーがシリウスに話した。
「ああ、ほとんど病的だと聞いた」シリウスは頷うなずいた。「わたしの推測では、あいつは、もう一人『死し喰くい人びと』を捕まえれば昔の人気を取り戻せると、まだそんなふうに考えているのだ」
「そして、学校に忍び込んで、スネイプの研究室を家や捜さがししたんだ!」ロンがハーマイオニーを見ながら、勝ち誇ほこったように言った。
「そうだ。それがまったく理屈に合わない」シリウスが言った。
「理屈に合うよ!」ロンが興こう奮ふんして言った。
しかし、シリウスは頭を振った。
「いいかい。クラウチがスネイプを調べたいなら、試合の審しん査さ員いんとして来ればいい。しょっちゅうホグワーツに来て、スネイプを見張る格かっ好こうな口実ができるじゃないか」
「それじゃ、スネイプが何か企んでいるって、そう思うの?」
ハリーが聞いた。が、ハーマイオニーが口を挟はさんだ。
「いいこと? あなたが何と言おうと、ダンブルドアがスネイプを信用なさっているのだから――」
「まったく、いい加減にしろよ、ハーマイオニー」ロンがイライラした。「ダンブルドアは、そりゃ、すばらしいよ。だけど、ほんとにずる賢い闇やみの魔法使いなら、ダンブルドアを騙だませないわけじゃない――」
「だったら、そもそもどうしてスネイプは、一年生のときハリーの命を救ったりしたの? どうしてあのままハリーを死なせてしまわなかったの?」
「知るかよ――ダンブルドアに追い出されるかもしれないと思ったんだろ」