「どう思う? シリウス?」ハリーが声を張り上げ、ロンとハーマイオニーは、罵ののしり合うのをやめて、耳を傾けた。
「二人ともそれぞれいい点を突いている」シリウスがロンとハーマイオニーを見て、考え深げに言った。
「スネイプがここで教えていると知って以来、わたしは、どうしてダンブルドアがスネイプを雇やとったのかと不思議に思っていた。スネイプはいつも闇の魔術に魅みせられていて、学校ではそれで有名だった。気味の悪い、べっとりと脂あぶらっこい髪かみをした子供だったよ。あいつは」
シリウスがそう言うと、ハリーとロンは顔を見合わせてニヤッとした。
「スネイプは学校に入ったとき、もう七年生の大半の生徒より多くの『呪のろい』を知っていた。スリザリン生の中で、後のちにほとんど全員が『死し喰くい人びと』になったグループがあり、スネイプはその一員だった」シリウスは手を前に出し、指を折って名前を挙げた。「ロジエールとウィルクス――両方ともヴォルデモートが失しっ墜ついする前の年に、『闇やみ祓ばらい』に殺された。レストレンジたち――夫婦だが――アズカバンにいる。エイブリー――聞いたところでは、『服従ふくじゅうの呪じゅ文もん』で動かされていたと言って、辛からくも難を逃のがれたそうだ――まだ捕まっていない。だが、わたしの知るかぎり、スネイプは『死喰い人』だと非難されたことはない――それだからどうと言うのではないが。『死喰い人』の多くが一度も捕まっていないのだから。しかも、スネイプは、たしかに難を逃れるだけの狡こう猾かつさを備えている」
「スネイプはカルカロフをよく知っているよ。でもそれを隠したがってる」ロンが言った。
「うん。カルカロフが昨日きのう、『魔ま法ほう薬やく』のクラスに来たときの、スネイプの顔を見せたかった!」
ハリーが急いで言葉を継いだ。
「カルカロフがスネイプに話があったんだ。スネイプが自分を避さけているってカルカロフが言ってた。カルカロフはとっても心配そうだった。スネイプに自分の腕の何かを見せていたけど、何だか、僕には見えなかった」
「スネイプに自分の腕の何かを見せた?」シリウスはすっかり当とう惑わくした表情だった。何かに気を取られたように汚れた髪かみを指で掻かきむしり、それからまた肩をすくめた。「さあ、わたしには何のことやらさっぱりわからない……しかし、もしカルカロフが真剣に心配していて、スネイプに答えを求めたとすれば……」