シリウスは洞どう窟くつの壁かべを見つめ、それから焦しょう燥そう感かんで顔をしかめた。
「それでも、ダンブルドアがスネイプを信用しているというのは事実だ。ほかの者なら信用しないような場合でも、ダンブルドアなら信用するということもわかっている。しかし、もしもスネイプがヴォルデモートのために働いたことがあるなら、ホグワーツで教えるのをダンブルドアが許すとはとても考えられない」
「それなら、ムーディとクラウチは、どうしてそんなにスネイプの研究室に入りたがるんだろう」ロンがしつこく言った。
「そうだな」シリウスは考えながら答えた。「マッド‐アイのことだ。ホグワーツに来たとき、教師全員の部屋を捜そう索さくするぐらいのことはやりかねない。ムーディは『闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ』を真剣に受け止めている。ダンブルドアと違い、ムーディのほうは誰も信用しないのかもしれない。ムーディが見てきたことを考えれば、当然だろう。しかし、これだけはムーディのために言っておこう。あの人は殺さずにすむときは殺さなかった。できるだけ生け捕りにした。厳きびしい人だが、『死し喰くい人びと』のレベルまで身を落とすことはなかった。しかし、クラウチは……クラウチはまた別だ……本当に病気か? 病気なら、なぜそんな身を引きずってまでスネイプの研究室に入り込んだ? 病気でないなら……何が狙いだ? ワールドカップで、貴き賓ひん席せきに来れないほど重要なことをしていたのか? 三さん校こう対たい抗こう試じ合あいの審しん査さをするべきときに、何をやっていたんだ?」
シリウスは、洞窟の壁を見つめたまま、黙だまり込んだ。バックビークは見み逃のがした骨はないかと、岩の床をあちこちほじくっている。
シリウスがやっと顔を上げ、ロンを見た。
「君の兄さんがクラウチの秘ひ書しょだと言ったね? 最近クラウチを見かけたかどうか、聞くチャンスはあるか?」
「やってみるけど」ロンは自信なさそうに言った。「でも、クラウチが何か怪しげなことを企んでいる、なんていうふうに取られる言い方はしないほうがいいな。パーシーはクラウチが大好きだから」
「それに、ついでだから、バーサ・ジョーキンズの手がかりがつかめたかどうか聞き出してみるといい」シリウスは別な「日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」を指した。