「バグマンは僕に、まだつかんでないって教えてくれた」ハリーが言った。
「ああ、バグマンの言葉がそこに引用されている」シリウスは新聞のほうを向いて頷うなずいた。
「バーサがどんなに忘れっぽいかと喚わめいている。まあ、わたしの知っていたころのバーサとは変わっているかもしれないが、わたしの記憶では、バーサは忘れっぽくはなかった――むしろ逆だ。ちょっとぼんやりしていたが、ゴシップとなると、すばらしい記憶力だった。それで、よく災いに巻き込まれたものだ。いつ口を閉じるべきなのかを知らない女だった。魔ま法ほう省しょうでは少々厄やっ介かい者ものだっただろう……だからバグマンが長い間探そうともしなかったのだろう……」
シリウスは大きなため息をつき、落ち窪くぼんだ目を擦こすった。
「何時かな?」
ハリーは腕時計を見たが、湖の中で一時間を過ごしてから、ずっと止まったままだったことを思い出した。
「三時半よ」ハーマイオニーが答えた。
「もう学校に戻ったほうがいい」シリウスが立ち上がりながら、そう言った。
「いいか。よく聞きなさい……」シリウスはとくにハリーをじっと見た――「君たちは、わたしに会うために学校を抜け出したりしないでくれ。いいね? ここ宛あてにメモを送ってくれ。これからも、おかしなことがあったら知りたい。しかし許可なしにホグワーツを出たりしないように。誰かが君たちを襲おそう格かっ好こうのチャンスになってしまうから」
「僕を襲おうとした人なんて誰もいない。ドラゴンと水すい魔まが数匹だけだよ」ハリーが言った。
しかし、シリウスはハリーを睨にらんだ。
「そんなことじゃない……この試合が終われば、わたしはまた安心して息ができる。つまり六月まではだめだ。それから、大切なことが一つ。君たちの間でわたしの話をするときは、『スナッフルズ』と呼びなさい。いいかい?」