ハリーも暖炉のほうを見た。ウィンキーは前に見たのと同じ丸椅子に座っていたが、汚れ放題で、後ろの黒く煤すすけたレンガとすぐには見分けがつかなかった。洋服はボロボロで洗濯もしていない。バタービールの瓶びんを握り、暖炉の火を見つめて、微かすかに体を揺ゆらしている。ハリーたちが見ている間に、ウィンキーは大きく「ヒック」としゃくり上げた。
「ウィンキーはこのごろ一日六本も飲みます」ドビーがハリーに囁ささやいた。
「でも、そんなに強くないよ、あれは」ハリーが言った。
しかしドビーは頭を振った。
「屋敷妖精には強すぎるのでございます」
ウィンキーがまたしゃっくりした。エクレアを運んできた妖精たちが、非難がましい目でウィンキーを睨にらみ、持ち場に戻った。
「ウィンキーは嘆き暮らしているのでございます。ハリー・ポッター」ドビーが悲しそうに囁ささやいた。「ウィンキーは家に帰りたいのです。ウィンキーはいまでもクラウチさまをご主人だと思っているのでございます。ダンブルドア校長先生がいまのご主人さまだと、ドビーがどんなに言っても聞かないのでございます」
「やあ、ウィンキー」ハリーは突然ある考えが閃ひらめき、ウィンキーに近づいて、腰を屈かがめて話しかけた。「クラウチさんがどうしてるか知らないかな? 三さん校こう対たい抗こう試じ合あいの審しん査さをしに来なくなっちゃったんだけど」
ウィンキーの目がチラチラッと光った。大きな瞳ひとみが、ぴたりとハリーを捕らえた。もう一度ふらりと体を揺ゆらしてから、ウィンキーが言った。
「ご―ご主人さまが――ヒック――来ない――来なくなった?」
「うん」ハリーが言った。「第一の課題のときからずっと姿を見てない。『日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん』には病気だって書いてあるよ」
ウィンキーがまたふらふらっと体を揺らし、とろんとした目でハリーを見つめた。
「ご主人さま――ヒック――ご病気?」ウィンキーの下した唇くちびるがわなわな震ふるえはじめた。