「君って、どうして黙だまってられないんだ? ハーマイオニー?」厨房の戸が背はい後ごでバタンと閉まったとたん、ロンが怒り出した。「連中は、僕たちにもうここに来てほしくないと思ってるぞ! ウィンキーからクラウチのことをもっと聞き出せたのに!」
「あら、まるでそれが気になってるみたいな言い方ね!」ハーマイオニーが混ぜっ返した。「食べ物に釣つられてここに下りてきたいくせに!」
その後はとげとげしい一日になった。談だん話わ室しつで、ロンとハーマイオニーが宿題をしながら口こう論ろんに火花を散らすのを聞くのに疲れ、その晩ハリーは、シリウスへの食べ物を持って、一人でふくろう小屋に向かった。
ピッグウィジョンは小さすぎて、一羽では大きなハムをまるまる山まで運びきれないので、ハリーは、メンフクロウ二羽を介かい助じょ役やくに頼むことにした。夕暮れの空に、三羽は飛び立った。一いっ緒しょに大きな包みを運ぶ姿が、何とも奇妙だった。ハリーは窓まど枠わくにもたれて校庭を見ていた。禁じられた森の暗い梢こずえがざわめき、ダームストラングの船の帆ほがはためいている。一羽のワシミミズクが、ハグリッドの小屋の煙突からくるくると立ち昇る煙をくぐり抜けて飛んできた。そして城のほうに舞い下り、ふくろう小屋の周りを旋せん回かいして姿を消した。見下ろすと、ハグリッドが小屋の前で、せっせと土を掘り起こしていた。何をしているのだろう。新しい野菜畑を作っているようにも見える。ハリーが見ていると、マダム・マクシームがボーバトンの馬車から現れ、ハグリッドのほうに歩いていった。ハグリッドと話したがっている様子だ。ハグリッドは鋤すきに寄り掛かかって手を休めたが、長く話す気はなかったらしい。ほどなくマダム・マクシームは馬車に戻っていった。
グリフィンドール塔とうに戻って、ロンとハーマイオニーのいがみ合いを聞く気にはなれず、ハリーは闇やみがハグリッドの姿を呑のみ込んでしまうまで、その耕す姿を眺ながめていた。やがて周りのふくろうが目を覚ましはじめ、ハリーのそばを音もなく飛んで夜空に消え去った。