「どうしたんだい?」ハリーが聞いた。「味が気に入らないの?」
「ううん」ロンはぶっきらぼうに言った。「金貨のこと、どうして話してくれなかったんだ?」
「何の金貨?」ハリーが聞いた。
「クィディッチ・ワールドカップで僕が君にやった金貨さ」ロンが答えた。「『万まん眼がん鏡きょう』の代わりに君にやった、レプラコーンの金貨。貴き賓ひん席せきで。あれが消えちゃったって、どうして言ってくれなかったんだ?」
ハリーはロンの言っていることが何なのか、しばらく考えないとわからなかった。
「ああ……」やっと記憶が戻ってきた。「さあ、どうしてか……なくなったことにちっとも気がつかなかった。杖つえのことばっかり心配してたから。そうだろ?」
三人は玄げん関かんホールへの階段を上り、昼食をとりに大おお広ひろ間まに入った。
「いいなあ」席に着き、ローストビーフとヨークシャー・プディングを取り分けながら、ロンが出し抜けに言った。「ポケット一杯のガリオン金貨が消えたことにも気づかないぐらい、お金をたくさん持ってるなんて」
「あの晩は、ほかのことで頭が一杯だったんだって、そう言っただろ!」ハリーはイライラした。「僕たち全員、そうだった。そうだろう?」
「レプラコーンの金貨が消えちゃうなんて、知らなかった」ロンが呟つぶやいた。「君に支払いずみだと思ってた。君、クリスマス・プレゼントにチャドリー・キャノンズの帽ぼう子しを僕にくれちゃいけなかったんだ」
「そんなこと、もういいじゃないか」ハリーが言った。
ロンはフォークの先で突き刺さしたローストポテトを睨にらみつけた。
「貧乏って、嫌いやだな」ハリーとハーマイオニーは顔を見合わせた。二人とも、何と言っていいかわからなかった。
「惨みじめだよ」ロンはポテトを睨みつけたままだった。「フレッドやジョージが少しでもお金を稼かせごうとしてる気持、わかるよ。僕も稼げたらいいのに。僕、ニフラーがほしい」
「じゃあ、次のクリスマスにあなたにプレゼントする物、決まったわね」ハーマイオニーが明るく言った。ロンがまだ暗い顔をしているので、ハーマイオニーがまた言った。「さあ、ロン、あなたなんか、まだいいほうよ。だいたい指が膿うみだらけじゃないだけましじゃない」
ハーマイオニーは指が強こわばって腫はれ上がり、ナイフとフォークを使うのに苦労していた。
「あのスキーターって女、憎たらしい!」ハーマイオニーは腹立たしげに言った。
「何がなんでもこの仕返しはさせていただくわ!」