ハリーとクラムは一緒に競技場を出た。しかしクラムはダームストラングの船に戻る道はとらず、禁じられた森に向かって歩き出した。
「どうしてこっちのほうに行くんだい?」ハグリッドの小屋や、照明に照らされたボーバトンの馬車を通り過ぎながら、ハリーが聞いた。
「盗み聞きされたくヴぁない」クラムが短く答えた。
ボーバトンの馬のパドックから少し離れた静かな空地にたどり着くと、ようやくクラムは木陰で足を止め、ハリーのほうに顔を向けた。
「知りたいのだ」クラムが睨にらんだ。「君とハーミィ‐オウン‐ニニーの間にヴぁ、何かあるのか」
クラムの秘ひ密みつめいたやり方からして、何かもっと深しん刻こくなことを予想していたハリーは、拍ひょう子し抜けしてクラムをまじまじと見た。
「何にもないよ」ハリーが答えた。
しかし、クラムはまだ睨みつけている。なぜか、ハリーは、クラムがとても背が高いことにあらためて気づき、説明をつけ足した。
「僕たち、友達だ。ハーマイオニーはいま僕のガールフレンドじゃないし、これまで一度もそうだったことはない。スキーターって女がでっち上げただけだ」
「ハーミィ‐オウン‐ニニーヴぁ、しょっちゅう君のことをヴぁわ題だいにする」
クラムは疑うような目でハリーを見た。
「ああ。それは、ともだちだからさ」ハリーが言った。
国際的に有名なクィディッチの選手、ビクトール・クラムとこんな話をしていることが、ハリーには何だか信じられなかった。まるで、十八歳のクラムが、僕を同等に扱っているようじゃないか――本当のライバルのように――。
「君たちヴぁ一度も……これまで一度も……」
「一度もない」ハリーはきっぱり答えた。
クラムは少し気が晴れたような顔をした。ハリーをじーっと見つめ、それからこう言った。
「君ヴぁ飛ぶのがうまいな。第一の課題のとき、ヴぉく、見ていたよ」
「ありがとう」ハリーはニッコリした。そして、急に自分も背が高くなったような気がした。「僕、クィディッチ・ワールドカップで、君のこと見たよ。ウロンスキー・フェイント。君ってほんとうに――」
そのとき、クラムの背はい後ごの木立の中で何かが動いた。禁じられた森に蠢うごめくものについていささか経験のあるハリーは、本能的にクラムの腕をつかみ、くるりと体の向きを変えさせた。