「そうなんだよ。息子は最近『O・W・Lふくろう試し験けん』で十二科目もパスしてね。満足だよ。いや、ありがとう。いや、まったく鼻が高い。さてと、アンドラの魔ま法ほう大だい臣じんのメモを持ってきてくれるかな。返事を書く時間ぐらいあるだろう……」
「君はこの人と一いっ緒しょにここにいてくれ!」ハリーはクラムに言った。「僕がダンブルドアを連れてくる。僕が行くほうが、早い。校長室がどこにあるかを知ってるから――」
「この人、狂ってる」木をパーシーだと思い込んでいるらしく、ベラベラ木に話しかけているクラウチ氏を見下ろして、クラムは胡う散さん臭くさそうに言った。
「一緒にいるだけだから」ハリーは立ち上がりかけた。するとその動きに刺し激げきされてか、クラウチ氏がまた急変した。ハリーの膝ひざをつかみ、再び地べたに引きずり下ろしたのだ。
「私を……置いて……行かないで!」囁ささやくような声だ。また目が飛び出している。「逃げてきた……警けい告こくしないと……言わないと……ダンブルドアに会う……私のせいだ……みんな私のせいだ……バーサ……死んだ……みんな私のせいだ……息子……私のせいだ……ダンブルドアに言う……ハリー・ポッター……闇やみの帝てい王おう……より強くなった……ハリー・ポッター……」
「ダンブルドアを連れてきます。行かせてください。クラウチさん!」ハリーは夢中でクラムを振り返った。「手伝って。お願いだ」クラムは恐る恐る近寄り、クラウチ氏の脇わきにしゃがんだ。
「ここで見ていてくれればいいから」ハリーはクラウチ氏を振り解きながら言った。「ダンブルドアを連れて戻るよ」
「急いでくれよ」
クラムが呼びかける声を背に、ハリーは禁じられた森を飛び出し、暗い校庭を抜けて全速力で走った。校庭にはもう誰もいない。バグマン、セドリック、フラーの姿もない。ハリーは飛ぶように石段を上がり、樫かしの木の正面扉とびらを抜け、大だい理り石せきの階段を上がって三階へと疾しっ走そうした。