ハリーとダンブルドアが駆かけ寄った。クラムが地面に大の字に倒れている。意識がないらしい。クラウチ氏の影も形もない。ダンブルドアはクラムの上に屈かがみ込み、片方の瞼まぶたをそっと開けた。
「『失しっ神しん術じゅつ』にかかっておる」ダンブルドアは静かに言った。周りの木々を透すかすように見回すダンブルドアの半はん月げつメガネが、杖灯りにキラリと光った。
「誰か呼んできましょうか?」ハリーが言った。「マダム・ポンフリーを?」
「いや」ダンブルドアがすぐに答えた。「ここにおるのじゃ」
ダンブルドアは杖を宙に上げ、ハグリッドの小屋を指した。杖から何か銀色の物が飛び出し、半はん透とう明めいな鳥のゴーストのように、それは木々の間をすり抜け、飛び去った。それからダンブルドアは再びクラムの上に屈み込み、杖をクラムに向けて唱となえた。
「リナベイト! 蘇そ生せいせよ!」
クラムが目を開けた。ぼんやりしている。ダンブルドアを見ると、クラムは起き上がろうとした。しかし、ダンブルドアはクラムの肩を押さえ、横にならせた。
「あいつがヴぉくを襲おそった!」クラムが頭を片手で押さえながら呟つぶやいた。「あの狂った男がヴぉくを襲おそった! ヴぉくが、ポッターがどこへ行ったかと振り返ったら、あいつが、後ろからヴぉくを襲った!」
「しばらくじっと横になっているがよい」ダンブルドアが言った。
雷のような足音が近づいてきた。ハグリッドがファングを従え、息せき切ってやってきた。石弓を背負っている。
「ダ、ダンブルドア先生様!」ハグリッドは目を大きく見開いた。「ハリー――いってえ、これは――?」
「ハグリッド、カルカロフ校長を呼んできてくれんか」ダンブルドアが言った。「カルカロフの生徒が襲われたのじゃ。それがすんだら、ご苦労じゃが、ムーディ先生に警けい告こくを――」
「それには及ばん、ダンブルドア」ゼイゼイという唸うなり声がした。「ここにおる」
ムーディがステッキにすがり、杖つえ灯あかりを点ともし、足を引きずってやってきた。
「この足め」ムーディが腹立たしげに言った。「もっと早く来れたものを……何事だ? スネイプが、クラウチがどうのとかと言っておったが――」
「クラウチ?」ハグリッドがポカンとした。
「カルカロフを早く、ハグリッド!」ダンブルドアの鋭するどい声が飛んだ。
「あ、へえ……わかりましただ。先生様……」そう言うなり、くるりと背を向け、ハグリッドは暗い木立の中に消えていった。ファングが駆かけ足であとに従った。