「謝あやまれ!」ハグリッドが唸うなった。ハグリッドの巨大なこぶしを喉のど元もとに突きつけられ、カルカロフは息が詰まり、両足は宙に浮いてブラブラしていた。
「ハグリッド、やめるのじゃ!」ダンブルドアが叫さけんだ。目がピカリと光った。
ハグリッドはカルカロフを木に押しつけていた手を離した。カルカロフはズルズル木の幹に沿ってずり落ち、ぶざまに丸まって木の根元にどさりと落ちた。小枝や木の葉がバラバラとカルカロフの頭上に降ふりかかった。
「ご苦労じゃが、ハグリッド、ハリーを城まで送ってやってくれ」ダンブルドアが鋭するどい口調で言った。
ハグリッドは息を荒あららげ、カルカロフを恐ろしい顔で睨にらみつけた。
「俺おれは、ここにいたほうがいいんではねえでしょうか、校長先生様……」
「ハリーを学校に連れていくのじゃ、ハグリッド」ダンブルドアはきっぱりと繰り返した。
「まっすぐにグリフィンドール塔とうへ連れていくのじゃ。そして、ハリー――動くでないぞ。何かしたくとも――ふくろう便を送りたくとも――明日の朝まで待つのじゃ。わかったかな?」
「あの――はい」ハリーはダンブルドアをじっと見た。たったいま、ピッグウィジョンをシリウスのところに送って、何が起こったかを知らせようと思っていたのに、ダンブルドアはどうしてそれがわかったんだろう?
「ファングを残していきますだ。校長先生様」ハグリッドがカルカロフを脅おどすように睨みつけながら言った。カルカロフは毛皮と木の根とに縺もつれて、まだ木の根元に伸びていた。
「ファング、ステイまて。ハリー、行こう」
二人は黙だまったまま、ボーバトンの馬車を通り過ぎ、城に向かって歩いた。