「ハリー、もう一回話してちょうだい」ハーマイオニーが言った。「クラウチさんは、何をしゃべったの?」
「もう話しただろ。わけのわからないことだったって」ハリーが言った。「ダンブルドアに何かを警けい告こくしたいって。バーサ・ジョーキンズの名前ははっきり言った。もう死んでると思ってるらしいよ。何かが、自分のせいだって、何度も繰り返してた……自分の息子のことを言った」
「そりゃ、たしかにあの人のせいだわ」ハーマイオニーはつっけんどんに言った。
「あの人、正気じゃなかった」ハリーが言った。「話の半分ぐらいは、奥さんと息子がまだ生きているつもりで話してたし、パーシーに仕事のことばかり話しかけて、命令していた」
「それと……『例のあの人』については何て言ったんだっけ?」ロンが聞きたいような、聞きたくないような言い方をした。
「それも、もう話しただろ」ハリーはのろのろと繰り返した。「より強くなっているって、そう言ってたんだ」
みんな黙だまり込んだ。それから、ロンが空元気を振り絞しぼって言った。
「だけど、クラウチは正気じゃなかったんだ。そう言ったよね。だから、半分ぐらいはたぶんうわ事ごとさ……」
「ヴォルデモートのことをしゃべろうとしたときは、いちばん正気だったよ」ハリーは、ロンがヴォルデモートの名前だけでぎくりとするのを無む視しした。「言葉を二つつなぐことさえやっとだったのに、そのことになると、自分がどこにいて何をしたいのかがわかってたみたいなんだ。ダンブルドアに会わなきゃって、そればっかり言ってた」
ハリーは窓から目を離し、天井の垂たる木きを見上げた。ふくろうのいない止まり木が多かった。ときどき一羽また一羽と、夜の狩かりから戻ったふくろうが、鼠ねずみをくわえてスイーッと窓から入ってきた。