「ムーディ先生にお目にかかるのには早すぎると思う?」螺ら旋せん階かい段だんを下りながら、ハーマイオニーが言った。
「うん」ハリーが答えた。「こんな夜明けに起こしたら、僕たちドアごと吹っ飛ばされると思うな。ムーディの寝込みを襲おそったと思われちゃうよ。休み時間まで待ったほうがいい」
「魔ま法ほう史し」の授業がこんなにのろのろ感じられるのも珍めずらしかった。ハリーは自分の腕時計をついに捨ててしまったので、ロンの腕時計を覗のぞき込んでばかりいた。しかしロンの時計の進みがあまりに遅いので、きっとこれも壊こわれているに違いないと思った。三人とも疲れ果てていたので、机に頭を載のせたら気持よく眠り込んでしまっただろう。ハーマイオニーでさえ、いつものようにノートをとる様子もなく、片手で頭を支え、ビンズ先生をとろんとした目で見つめているだけだった。
やっと終業のベルが鳴ると、三人は廊ろう下かに飛び出し、「闇やみの魔ま術じゅつ」の教室に急いだ。ムーディは教室から出るところだった。ムーディも、三人と同じように疲れた様子だった。普通の目の瞼まぶたが垂たれ下がり、いつもに増してひん曲がった顔に見えた。
「ムーディ先生?」生徒たちを掻かき分けてムーディに近づきながら、ハリーが呼びかけた。
「おお、ポッター」ムーディが唸うなった。「魔法の目」が、通り過ぎていく二、三人の一年生を追っていた。一年生はびくびくしながら足を速めて通り過ぎた。「魔法の目」が、背はい後ごを見るようにひっくり返り、一年生が角を曲がるのを見届け、それからムーディが口を開いた。
「こっちへ来い」ムーディは少し後ろに下がって、空からになった教室に三人を招しょうじ入れ、そのあとで自分も入ってドアを閉めた。