「見つけたのですか?」ハリーは前置きなしに聞いた。「クラウチさんを?」
「いや」そう言うと、ムーディは自分の机まで行って腰かけ、小さく呻うめきながら義足を伸ばし、携けい帯たい用よう酒さか瓶びんを引っ張り出した。
「あの地図を使いましたか?」ハリーが聞いた。
「もちろんだ」ムーディは酒瓶を口にしてぐいと飲んだ。「おまえのまねをしてな、ポッター。『呼よび寄よせ呪じゅ文もん』でわしの部屋から禁じられた森まで、地図を呼び出した。クラウチは地図のどこにもいなかった」
「それじゃ、やっぱり『姿すがたくらまし』術?」ロンが言った。
「ロン! 学校の敷しき地ち内ないでは、『姿くらまし』はできないの!」ハーマイオニーが言った。
「消えるには、何か他の方法があるんですね? 先生?」
ムーディの「魔法の目」が、ハーマイオニーを見み据すえて、笑うように震ふるえた。
「おまえもプロの『闇やみ祓ばらい』になることを考えてもよい一人だな」ムーディが言った。「グレンジャー、考えることが筋道立っておる」
ハーマイオニーがうれしそうに頬ほおを赤らめた。
「うーん、クラウチは透とう明めいではなかったし」ハリーが言った。「あの地図は透明でも現れます。それじゃ、きっと学校の敷地から出てしまったのでしょう」
「だけど、自分一人の力で?」ハーマイオニーの声に熱がこもった。「それとも、誰かがそうさせたのかしら?」
「そうだ。誰かがやったのかも――箒ほうきに乗せて、一いっ緒しょに飛んでいった。違うかな?」
ロンは急いでそう言うと、期待のこもった目でムーディを見た。自分も「闇祓い」の素質があると言ってもらいたそうな顔だった。
「攫さらわれた可能性が皆無ではない」ムーディが唸うなった。
「じゃ」ロンが続けた。「クラウチはホグズミードのどこかにいると?」
「どこにいてもおかしくはないが」ムーディが頭を振った。「確実なのは、ここにはいないということだ」
ムーディは大きな欠伸あくびをした。傷きず痕あとが引っ張られて伸びた。ひん曲がった口の中で、歯が数本欠けているのが見えた。
「さーて、ダンブルドアが言っておったが、おまえたち三人は探偵ごっこをしておるようだな。クラウチはおまえたちの手には負えん。魔ま法ほう省しょうが捜そう索さくに乗り出すだろう。ダンブルドアが知らせたのでな。ポッター、おまえは第三の課題に集中することだ」
「え?」ハリーは不意を突かれた。「ああ、ええ……」
あの迷めい路ろのことは、昨夜クラムと一いっ緒しょにあの場を離れてから一度も考えなかった。