「お手の物だろう、これは」ムーディは傷きずだらけの無ぶ精しょう髭ひげの生えた顎あごをさすりながら、ハリーを見上げた。「ダンブルドアの話では、おまえはこの手のものは何度もやって退のけたらしいな。一年生のとき、賢けん者じゃの石を守る障害しょうがいの数々を破ったとか。そうだろうが?」
「僕たちが手伝ったんだ」ロンが急いで言った。「僕とハーマイオニーが手伝った」
ムーディがニヤリと笑った。
「ふむ。こんどのも練習を手伝うがよい。こんどはポッターが勝って当然だ。当面は……ポッター、警けい戒かいを怠るな。油ゆ断だん大たい敵てきだ」
ムーディは携けい帯たい用よう酒さか瓶びんからまたグイーッと大きくひと飲みし、「魔法の目」を窓のほうにくるりと回した。ダームストラング船のいちばん上の帆ほが窓から見えていた。
「おまえたち二人は」ムーディの普通の目がロンとハーマイオニーを見ていた。「ポッターから離れるでないぞ。いいか? わしも目を光らせているが、それにしてもだ……警戒の目は多すぎて困るということはない」
翌よく朝あさには、シリウスが同じふくろうで返事をよこした。ハリーのそばにそのふくろうが舞い降りると同時に、モリフクロウが一羽、嘴くちばしに「日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」をくわえて、ハーマイオニーの前に降りてきた。新聞の最初の二、三面を斜め読みしたハーマイオニーが「フン! あの女、クラウチのことはまだ嗅かぎつけてないわ!」と言った。それから、ロン、ハリーと一緒に、シリウスが一昨日おとといの夜の不ふ可か思し議ぎな事件について、何と言ってきたのかを読んだ。
ハリー――いったい何を考えているんだ? ビクトール・クラムと一緒に禁じられた森に入るなんて。誰かと夜出歩くなんて、二度としないと返事のふくろう便で約束してくれ。ホグワーツには、誰かきわめて危険な人物がいる。クラウチがダンブルドアに会うのを、そいつが止めようとしたのは明らかだ。そいつは、暗くら闇やみの中で、君のすぐ近くにいたはずだ。殺されていたかもしれないのだぞ。
君の名前が「炎ほのおのゴブレット」に入っていたのも、偶ぐう然ぜんではない。誰かが君を襲おそおうとしているなら、これからが最後のチャンスだ。ロンやハーマイオニーから離れるな。夜にグリフィンドール塔とうから出るな。そして、第三の課題のために準備するのだ。「失しっ神しんの呪じゅ文もん」「武ぶ装そう解かい除じょ呪じゅ文もん」を練習すること。呪のろいをいくつか覚えておいても損はない。クラウチに関しては、君の出る幕まくではない。おとなしくして、自分のことだけを考えるのだ。もう変なところへ出ていかないと、約束の手紙を送ってくれ。待っている。
シリウスより