城の中にこもっていなければならないとなると、ホグワーツの校庭はますます強く誘いかけてくるようだった。二、三日は、ハリーもハーマイオニーやロンと図書室に行って呪のろいを探したり、空からっぽの教室に三人で忍び込んで練習をしたりして自由時間を過ごした。ハリーはこれまで使ったことのない「失神の呪文」に集中していた。困ったことには、練習をすると、ロンかハーマイオニーがある程度犠ぎ牲せいになるのだった。
「ミセス・ノリスを攫ってこれないか?」
月曜の昼食時に、「呪じゅ文もん学がく」の教室に大の字になって倒れたまま、ロンが提案した。五回連続で「失神の呪文」にかけられ、ハリーに目を醒さまさせられた直後のことだ。
「ちょっとあいつに『失神術』をかけてやろうよ。じゃなきゃ、ハリー、ドビーを使えばいい。君のためなら何でもすると思うよ。僕、文句を言ってるわけじゃないけどさ」――ロンは尻しりをさすりながらそろそろと立ち上がった――「だけど、あっちこっち痛くて……」
「だって、あなた、クッションのところに倒れないんだもの!」ハーマイオニーがもどかしそうに言いながら、クッションの山を並べ直した。「追おい払はらい呪じゅ文もん」の練習に使ったものを、フリットウィック先生が戸と棚だなに入れたままにしておいたのだ。「後ろにバッタリ倒れなさいよ!」
「『失神』させられたら、ハーマイオニー、狙い定めて倒れられるかよ!」ロンが怒った。「こんどは君がやれば?」
「いずれにしても、ハリーはもうコツをつかんだと思うわ」ハーマイオニーが慌あわてて言った。「それに、『武ぶ装そう解かい除じょ』のほうは心配ないわ。ハリーはずいぶん前からこれを使ってるし……今夜はここにある呪のろいのどれかに取りかかったほうがいいわね」
ハーマイオニーは、図書室で、三人で作ったリストを眺ながめた。
「この呪いなんか、よさそうだわ。『妨ぼう害がいの呪い』。あなたを襲おそう物のスピードを遅くします。ハリー、この呪いから始めましょう」
ベルが鳴った。三人はフリットウィック先生の戸棚に急いでクッションを押し込み、そっと教室を抜け出した。