「それじゃ、夕食のときにね!」ハーマイオニーはそう言うと「数占かずうらない」の授業に行った。ハリーとロンは北きた塔とうの「占うらない学がく」の教室に向かった。金色の眩まぶしい日光が高窓から射さし込み、廊ろう下かに太い縞しま模も様ようを描いていた。空はエナメルを塗ぬったかのように、明るいブルー一色だった。
「トレローニーの部屋は蒸むし風呂だぞ。あの暖だん炉ろの火を消したことがないからな」天井の撥はね戸の下に伸びる銀の梯はし子ごに向かって、階段を上りながら、ロンが言った。
そのとおりだった。ぼんやりと灯あかりの点ともった部屋はうだるような暑さだった。香料こうりょう入りの火から立ち昇る香気はいつもより強く、ハリーは頭がクラクラしながら、カーテンを閉めきった窓に向かって歩いていった。トレローニー先生がランプに引っかかったショールをはずすのに向こうを向いた隙すきに、ハリーはほんのわずか窓を開け、チンツ張りの肘ひじ掛かけ椅い子すに背をもたせ、そよ風が顔の回りを撫なでるようにした。とても心地よかった。
「みなさま」トレローニー先生は、ヘッドレストつきの肘掛椅子に座り、生徒と向き合い、メガネで奇妙に拡大された目でぐるりとみんなを見回した。「星せい座ざ占うらないはもうほとんど終わりました。ただし、今日は、火星の位置がとても興味深いところにございましてね。その支配力を調べるのにはすばらしい機会ですの。こちらをご覧あそばせ。灯りを落としますわ……」
先生が杖つえを振ると、ランプが消えた。暖炉の火だけが明るかった。トレローニー先生は屈かがんで、自分の椅子の下からガラスのドームに入った太陽系のミニチュア模も型けいを取り上げた。それは美しいものだった。九個の惑わく星せいの周りにはそれぞれの月が輝かがやき、燃えるような太陽があり、その全部が、ガラスの中にぽっかりと浮いている。トレローニー先生が、火星と海かい王おう星せいが惚ほれ惚ぼれするような角度を構こう成せいしていると説明しはじめたのを、ハリーはぼんやりと眺ながめていた。ムッとするような香気が押し寄せ、窓からのそよ風が顔を撫でた。どこかカーテンの陰で、虫がやさしく鳴いているのが聞こえた。ハリーの瞼まぶたが重くなってきた……。