ハリーはワシミミズクの背に乗って、澄すみ切ったブルーの空高く舞い上がり、高い丘の上に立つ蔦つたの絡からんだ古い屋や敷しきへと向かっていた。だんだん低く飛ぶと、心地よい風がハリーの顔を撫なでた。
そしてハリーは、館の上の階の暗い破れた窓にたどり着き、中に入った。いま、ハリーとワシミミズクは、いちばん奥の部屋を目指して、薄うす暗ぐらい廊ろう下かを飛んでいる……ドアから暗い部屋に入ると、部屋の窓は板が打ちつけてあった……。
ハリーはワシミミズクから降りた……ワシミミズクが部屋を横切り、ハリーに背を向けた椅子のほうへと飛んでいくのを、ハリーは見ていた……椅子のそばの床に、二つの黒い影が見える……二つの影が蠢うごめいている……。
一つは巨大な蛇へび……もう一つは男……禿はげかけた頭、薄うすい水色の目、尖とがった鼻の小男だ……男は暖だん炉ろマットの上で、ゼイゼイ声を上げ、すすり泣いている……。
「ワームテール、貴き様さまは運のいいやつよ」
冷たい、甲かん高だかい声が、ワシミミズクの止まった肘ひじ掛かけ椅い子すの奥から聞こえた。
「まったく運のいいやつよ。貴様はしくじったが、すべてが台だい無なしにはならなかった。やつは死んだ」
「ご主人様」床に平ひれ伏ふした男が喘あえいだ。「ご主人様。わたくしめは……わたくしめは、まことにうれしゅうございます……まことに申し訳わけなく……」
「ナギニ」冷たい声が言った。「おまえは運が悪い。結局、ワームテールをおまえの餌え食じきにはしない……しかし、心配するな。よいか……まだ、ハリー・ポッターがおるわ……」
蛇はシューッシューッと音を出した。舌がチロチロするのを、ハリーは見た。
「さて、ワームテールよ」冷たい声が言った。「失敗はもう二度と許さん。そのわけを、もう一度おまえの体に覚えさせよう」
「ご主人様……どうか……お許しを……」
椅子の奥のほうから杖つえの先せん端たんが出てきた。ワームテールに向けられている。
「クルーシオ! 苦しめ!」冷たい声が言った。
ワームテールは悲ひ鳴めいを上げた。体中の神経が燃えているような悲鳴だ。悲鳴がハリーの耳を劈つんざき、額ひたいの傷きずが焼きごてを当てられたように痛んだ。ハリーも叫さけんでいた……。ヴォルデモートが聞いたら、ハリーがそこにいることに気づかれてしまう……。