「やあ、フォークス」ハリーが言った。
フォークスはダンブルドアの飼かっている不ふ死し鳥ちょうで、扉の脇わきの金の止まり木に止まっていた。白鳥ぐらいの大きさの、すばらしい真しん紅くと金こん色じきの羽を持った雄おすの不死鳥で、長い尾をシュッと振り、ハリーを見てやさしく目をパチクリした。
ハリーはダンブルドアの机の前の椅子に座った。しばらくの間、ハリーはただ座って、いま漏もれ聞いたことを考え、傷きず痕あとを指でなぞりながら、額がくの中でスヤスヤ眠る歴代の校長たちを眺ながめていた。もう痛みは止まっていた。
こうしてダンブルドアの部屋にいて、もうすぐダンブルドアに夢の話を聞いてもらえると思うと、ハリーはなぜかずっと落ち着いた気分になった。ハリーは机の後ろの壁かべを見上げた。継つぎはぎだらけの「組分け帽子」が棚たなに置いてある。その隣となりのガラスケースには、柄つかに大きなルビーをいくつかはめ込んだ、見事な銀の剣つるぎが収められている。二年生のとき、「組分け帽ぼう子し」の中からハリー自身が取り出した、あの剣だ。かつてこの剣は、ハリーの寮りょうの創始者、ゴドリック・グリフィンドールの持ち物だった。剣を見つめながら、ハリーは剣が助けにきてくれたときのことを、すべての望みが絶たれたと思ったあのときのことを思い出していた。すると、ガラスケースに銀色の光が反射し、踊おどるようにチラチラ揺ゆれているのに気づいた。ハリーは光の射さしてくるほうを見た。すると、ハリーの背はい後ごの黒い戸と棚だなから、一筋眩まばゆいばかりの銀色の光が射しているのが見えた。戸棚の戸がきっちり閉まっていなかったのだ。ハリーは戸と惑まどいながらフォークスを見た。それから立ち上がって、戸棚のところへ行って戸を開けた。