ハリーは鎖の椅子に座らされた男を見下ろした。カルカロフだ。
ダンブルドアと違い、カルカロフはずっと若く見えた。髪かみもヤギ鬚ひげも黒々としている。滑なめらかな毛皮ではなく、ボロボロの薄うすいローブを着ている。震ふるえている。ハリーが見ているうちに、椅子の肘の鎖が急に金色に輝かがやき、くねくね這はい上がってカルカロフの腕に巻きつき、椅子に縛しばりつけた。
「イゴール・カルカロフ」ハリーの左手できびきびした声がした。
振り向くと、クラウチ氏がハリーの隣となりのベンチの真ん中で立ち上がっていた。髪は黒く、皺しわもずっと少なく、健康そうで冴さえていた。
「おまえは魔ま法ほう省しょうに証しょう拠こを提供するために、アズカバンからここに連れてこられた。おまえが、我々にとって重要な情報を提示すると理解している」
カルカロフは椅子にしっかり縛りつけられながらも、できるかぎり背筋を伸ばした。
「そのとおりです。閣かっ下か」恐怖にかられた声だったが、それでもそのねっとりした言い方には聞き覚えがあった。「わたしは魔法省のお役に立ちたいのです。手を貸したいのです――わたしは魔法省がやろうとしていることを知っております――闇やみの帝てい王おうの残党を一いち網もう打だ尽じんにしようとしていることを。わたしにできることでしたら、何でも喜んで……」
ベンチからザワザワと声が上がった。カルカロフに関心を持って品定めをする者もあれば、不信感を露あらわにする者もいた。そのとき、ダンブルドアの向こう隣から、聞き覚えのある唸うなり声が、はっきり聞こえた。
「汚いやつ」
ハリーはダンブルドアの向こう側を見ようと、身を乗り出した。マッド‐アイ・ムーディがそこに座っていた――ただし、姿すがた形かたちがいまとははっきりと違う。「魔法の目」はなく、両眼とも普通の目だ。激はげしい嫌けん悪おに目を細め、両眼でカルカロフを見下ろしている。