「それでも、何人かの名前を言うことはできるというわけだな?」クラウチ氏が言った。
「そ――そうです」カルカロフが喘あえぎながら言った。「しかも、主だった支持者たちです。あの人の命令を実行しているのを、この目で見ました。この情報を提供いたしますのは、わたしが全面的にあの人を否定し、身もだえするほどに深く後悔していることの証あかしとして――」
「名前は?」クラウチ氏が鋭するどく聞いた。
カルカロフは息を深く吸い込んだ。
「アントニン・ドロホフ。わたしは――この者がマグルを、そして――そして闇やみの帝てい王おうに従わぬ者を、数え切れぬほど拷ごう問もんしたのを見ました」
「その上、その者を手伝ったのだろうが」ムーディが呟つぶやいた。
「我々はすでにドロホフを逮たい捕ほした」クラウチが言った。「おまえのすぐあとに捕まえた」
「まことに?」カルカロフは目を丸くした。「そ――それは喜ばしい!」
言葉どおりには見えなかった。カルカロフにとってこれは大きな痛手だったと、ハリーにはわかった。せっかくの名前が一つむだになったのだ。
「ほかには?」クラウチが冷たく言った。
「も、もちろん……ロジエール」カルカロフが慌あわてて言った。「エバン・ロジエール」
「ロジエールは死んだ」クラウチが言った。「彼もおまえの直後に捕まった。おめおめ捕まるより戦うことを選び、抵てい抗こうして殺された」
「わしの一部を奪いおったがな」ムーディがハリーの右隣みぎどなりのダンブルドアに囁ささやいた。ハリーはもう一度振り返ってムーディを見た。大きく欠けた鼻を指し示しているのが見えた。
「それは――それは当然の報いで!」カルカロフの声が、こんどは明らかに慌てふためいていた。自分の情報が魔ま法ほう省しょうにとって何も役立たないのではと心配になりはじめたことが、ハリーにもわかった。カルカロフの目が、さっと部屋の隅すみのドアに走った。その向こう側に、間違いなく吸きゅう魂こん鬼きが待ち構えている。