「違う!」椅子に縛しばりつけられている鎖くさりを引っ張るようにもがきながら、カルカロフは叫んだ。「誓ってもいい! セブルス・スネイプは『死し喰くい人びと』だ!」
ダンブルドアが立ち上がった。
「この件に関しては、わしがすでに証明しておる」静かな口調だ。「セブルス・スネイプはたしかに『死喰い人』ではあったが、ヴォルデモートの失脚しっきゃくより前にわれらの側に戻り、自みずから大きな危険を冒おかしてわれわれの密みっ偵ていになってくれたのじゃ。わしが『死し喰くい人びと』ではないと同じように、いまやスネイプも『死喰い人』ではないぞ」
ハリーはマッド‐アイ・ムーディを振り返った。ムーディはダンブルドアの背はい後ごで、はなはだしく疑わしいという顔をしている。
「よろしい、カルカロフ」クラウチが冷たく言った。「おまえは役に立ってくれた。おまえの件は検討しておこう。その間、アズカバンに戻っておれ……」
クラウチ氏の声がだんだん遠ざかっていった。ハリーは周りを見回した。地ち下か牢ろうが、煙でできているかのように消えかかっていた。すべてがぼんやりしてきて、自分の体しか見えなかった。あたりは渦うず巻まく暗くら闇やみ……。
そして、地下牢がまた戻ってきた。ハリーは別の席に座っていた。やはりいちばん上のベンチだが、こんどはクラウチ氏の左ひだり隣どなりだった。雰ふん囲い気きががらりと変わり、リラックスして楽しげでさえあった。壁かべに沿ってぐるりと座っている魔法使いたちは、何かスポーツの観戦でもするように、ペチャクチャしゃべっている。ハリーの向かい側のベンチで、ちょうど中間くらいの高さのところにいる魔女が、ハリーの目をとらえた。短い金きん髪ぱつに、赤あか紫むらさき色いろのローブを着て、黄緑色の羽根ペンの先を舐なめている。間違いなく、若いころのリータ・スキーターだ。ハリーは周りを見回した。ダンブルドアが、前とは違うローブを着て、また隣に座っていた。クラウチ氏は前より疲れて見え、なぜか前よりやつれ、より酷き薄びしい顔つきに見える……。そうか、これは違う記憶なんだ。違う日の……違う裁判だ。