部屋の隅すみのドアが開き、ルード・バグマンが入ってきた。しかしこのバグマンは、盛りを過ぎた姿ではなかった。クィディッチ選手として最高潮のときに違いない。まだ鼻は折れていない。背が高く、引き締まった体だ。バグマンはおどおどしながら鎖くさりのついた椅子に腰かけたが、カルカロフのときのように鎖が巻きついて縛しばり上げたりはしなかった。それで元気を取り戻したのか、バグマンは傍ぼう聴ちょう席せきをざっと眺ながめ、何人かに手を振り、ちょっと笑顔さえ見せた。
「ルード・バグマン。おまえは、『死し喰くい人びと』の活動にかかわる罪状で、答弁するため、魔ま法ほう法ほう律りつ評ひょう議ぎ会かいに出頭したのだ」クラウチ氏が言った。「すでに、おまえに不利な証しょう拠こを聴取ちょうしゅしている。まもなく我々の評決ひょうけつが出る。評決を言い渡す前に、何か自分の証言につけ加えることはないか?」
ハリーは耳を疑った。ルード・バグマンが「死喰い人」?
「ただ」バグマンがばつが悪そうに笑いながら言った。「あの――わたしはちょっとばかでした――」
近くの席にいた魔法使いたちが、一人、二人、寛大に微ほほ笑えんだ。クラウチ氏は同調する気にはなれないらしかった。厳げん格かくそのもの、嫌けん悪お感かんむき出しの表情で、ルード・バグマンをぐいと見下ろしている。
「若わか僧ぞうめ、本当のことを言いおったわい」ハリーの背後から、誰かがダンブルドアに辛しん辣らつな口調で囁ささやいた。ハリーが振り向くと、またそこにムーディが座っていた。「あいつがもともとトロイやつだということを知らなければ、ブラッジャーを食らって、永久的に脳みそをやられたと言うところだがな……」
「ルドビッチ・バグマン。おまえはヴォルデモート卿きょうの支持者たちに情報を渡したとして逮たい捕ほされた」クラウチ氏が言った。「この咎とがにより、アズカバンに収監しゅうかんするのが適当である。期間は最低でも――」