しかし、周りのベンチから怒ど号ごうが飛んだ。魔法使いや魔女が壁かべを背に数人立ち上がり、クラウチ氏に対して首を振ったり、こぶしを振り上げたりしている。
「しかし、申し上げたとおり、わたしは知らなかったのです!」傍ぼう聴ちょう席せきのざわめきに消されないように声を張り上げ、バグマンが丸いブルーの目を真ん丸にして、熱っぽく言った。「まったく知らなかった! ルックウッドはわたしの父親の古い友人で……『例のあの人』の一味とは考えたこともなかった! わたしは味方のために情報を集めてるのだとばっかり思っていた! それに、ルックウッドは、将来わたしに魔ま法ほう省しょうの仕事を世話してやると、いつもそう言っていたのです……クィディッチの選手生命が終わったら、ですがね……そりゃ、死ぬまでブラッジャーに叩たたかれ続けてるわけにはいかないでしょう?」
傍聴席から忍び笑いが上がった。
「評決ひょうけつを採る」クラウチ氏が冷たく言った。地ち下か牢ろうの右手に向かって、クラウチ氏が呼びかけた。「陪ばい審しんは挙手願いたい……禁きん固こ刑けいに賛成の者……」
ハリーは地下牢の右手を見た。誰も手を挙げていない。壁を囲む席で、多くの魔法使いたちが拍手しはじめた。陪審席の魔女が一人立ち上がった。
「何かね?」クラウチが声を張り上げた。
「先週の土曜に行われたクィディッチのイギリス対トルコ戦で、バグマンさんがすばらしい活躍をなさいましたことに、お祝いを申し上げたいと思いますわ」魔女が一気に言った。
クラウチ氏はカンカンに怒っているようだ。地下牢は、いまや拍手喝かっ采さいだった。バグマンは、立ち上がり、ニッコリ笑ってお辞じ儀ぎした。
「情けない」バグマンが地下牢から出ていくと、クラウチ氏が席に着き、吐はき捨てるようにダンブルドアに言った。「ルックウッドが仕事を世話すると?……ルード・バグマンが入にゅう省しょうする日は、魔法省にとって悲しむべき日になるだろう……」