「それで、夢を見ました」ハリーが続けた。「ヴォルデモート卿きょうの夢です。ワームテールを……先生はワームテールが誰か、ご存ぞん知じですよね……拷ごう問もんしていました――」
「知っておるとも」ダンブルドアはすぐに答えた。「さあ、お続け」
「ヴォルデモートはふくろうから手紙を受け取りました。たしか、ワームテールの失敗はカバーされた、とか言っていました。誰かが死んだとかも。それから、ワームテールは蛇へびの餌え食じきにはしないと――ヴォルデモートの椅子のそばに蛇がいました。それから――それから、こう言いました。その代わりに僕を餌食にするって。そして、ワームテールに『磔はりつけの呪のろい』をかけて――僕の傷きず痕あとが痛みました」ハリーは一気に言った。「それで目が覚めたのです。とても痛くて」
ダンブルドアはただハリーを見ていた。
「あの――それでおしまいです」ハリーが言った。
「なるほど」ダンブルドアが静かに言った。「なるほど。さて、今年になって、ほかに傷きず痕あとが痛んだことがあるかの? 夏休みに、君の目を覚まさせたとき以外にじゃが?」
「いいえ、僕――夏休みに、それで目が覚めたことを、どうしてご存ぞん知じなのですか?」
ハリーは驚愕きょうがくした。
「シリウスと連絡を取り合っているのは、きみだけではない」ダンブルドアが言った。
「わしも、昨年、シリウスがホグワーツを離れて以来、ずっと接触せっしょくを続けてきたのじゃ。いちばん安全な隠れ場所として、あの山中の洞ほら穴あなを勧めたのはわしじゃ」
ダンブルドアは立ち上がり、机の向こうで往いったり来たり歩きはじめた。ときどきこめかみに杖つえ先さきを当て、キラキラ光る銀色の「想い」を取り出しては、「憂うれいの篩ふるい」に入れた。中の「想い」が急速に渦うず巻まきはじめ、ハリーにはもう何もはっきりしたものが見えなくなった。それはただ、ぼやけた色の渦になっていた。