「先生」しばらくして、ハリーが言った。「あの人が強くなってきたとお考えですか?」
「ヴォルデモートがかね?」ダンブルドアが「憂うれいの篩ふるい」の向こうから、ハリーを見つめた。以前にも何度か、ダンブルドアはこういう独特の鋭するどい眼まな差ざしでハリーを見つめたことがある。ハリーはいつも、心の奥底まで見み透すかされているような気になるのだ。ムーディの「魔法の目」でさえ、これはできないことだと思えた。
「これもまた、ハリー、わしの仮説にすぎんが」ダンブルドアは大きなため息をついた。その顔は、いままでになく年老いて、疲れて見えた。「ヴォルデモートが権力の座に登りつめていたあの時代」ダンブルドアが話しはじめた。
「いろいろな者が姿を消した。それが、一つの特徴じゃった。バーサ・ジョーキンズは、ヴォルデモートがたしかに最後にいたと思われる場所で、跡あと形かたもなく消えた。クラウチ氏もまた、姿を消した……しかもこの学校の敷しき地ち内で。それに、第三の行方不明者がいるのじゃ。残念ながら、これはマグルのことなので、魔ま法ほう省しょうは重要視しておらぬ。フランク・ブライスという名の男で、ヴォルデモートの父親が育った村に住んでおった。八月以来、この男の姿を見た者がない。わしは、魔法省の友人たちと違ってのう、マグルの新聞を読むのじゃよ」
ダンブルドアは真剣な目でハリーを見た。
「これらの失しっ踪そう事件は、わしには関連性があるように思えるのじゃ。魔法省は賛成せんが――きみは部屋の外で待っているときに聞いたかもしれぬがの」
ハリーは頷うなずいた。二人はまた黙だまり込んだ。ダンブルドアは時折「想い」を引き抜いていた。ハリーはもう出ていかなければと思いながら、好奇心で椅子から離れられなかった。